六七―六九
また日の暮初《くれそ》むる頃、新に天に現はれ出づるものありて、その見ゆるは眞《まこと》か否かわきがたきごとく 七〇―七二
我はかしこに多くの新しき靈ありて、かの二の輪の外《そと》に一の圓を造りゐたるを見きとおぼえぬ 七三―七五
あゝ聖靈の眞《まこと》の閃《きらめき》よ、その不意にしてかつ輝くこといかばかりなりけむ、わが目くらみて堪ふるをえざりき 七六―七八
されどベアトリーチェは、記憶の及ぶあたはざるまでいと美しくかつ微笑《ほゝゑ》みて見えしかば 七九―八一
わが目これより力を受けて再び自ら擧ぐるをえ、我はたゞわが淑女とともにいよいよ尊き救ひに移りゐたるを見たり 八二―八四
わがさらに高く昇れることを定かに知りしは、常よりも紅《あか》くみえし星の、燃ゆる笑ひによりてなりき 八五―八七
我わが心を盡し、萬人《よろづのひと》のひとしく用ゐる言葉にて、この新なる恩惠《めぐみ》に適《ふさ》はしき燔祭《はんさい》を神に獻《さゝ》げ 八八―九〇
しかして供物《くもつ》の火未だわが胸の中に盡きざるさきに、我はこの獻物《さゝげもの》の嘉納《かなふ》せられしことを知りたり 九一―九三
そは
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