ため、物言はんとてほどよく頭《かうべ》を擧《あ》げしかど 四―六
このとき我に現はれし物あり、いとつよくわが心を惹《ひ》きてこれを見るに專《もつぱら》ならしめ、我をしてわが告白を忘れしむ 七―九
透《す》きとほりて曇《くもり》なき玻※[#「王+黎」、第3水準1−88−35]または清く靜にてしかして底の見えわかぬまで深きにあらざる水に映《うつ》れば 一〇―一二
われらの俤《おもかげ》かすかに見えて、さながら白き額《ひたひ》の眞珠のたゞちに瞳に入らざるに似たり 一三―一五
我また語るを希《ねが》ふ多くのかゝる顏を見しかば、人と泉との間に戀を燃《もや》したるその誤りの裏をかへしき 一六―一八
かの顏を見るや、我はこれらを物に映《うつ》れる姿なりとし、その所有者《もちぬし》の誰なるをみんとて直ちに目をめぐらせり 一九―二一
されど何をも見ざりしかば、再びこれを前にめぐらし、うるはしき導者――彼は微笑《ほゝゑ》み、その聖なる目輝きゐたり――の光に注げり 二二―二四
彼我に曰ふ。汝の思ひの稚《をさな》きをみて我のほゝゑむを異《あや》しむなかれ、汝の足はなほいまだ眞理の上にかたく立たず 二五―二七
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