こと必ずや汝にあきらかならむ 一〇九―一一一
されどこの輪の周圍《まはり》のいと高きところの殘しゝ轍《あと》を人かへりみず、良酒《よきさけ》のありしところに黴《かび》生ず 一一二―一一四
彼の足跡《あしあと》を踏み傳ひて直く進みしかれの家族《やから》は全くその方向《むき》を變へ、指を踵《かゝと》の方に投ぐ 一一五―一一七
しかしてかくあしく耕すことのいかなる收穫《かりいれ》に終るやは、程なく知られむ、その時至らば莠《はぐさ》は穀倉《くら》を奪はるゝをかこつべければなり 一一八―一二〇
しかはあれ、人もしわれらの書《ふみ》を一枚《ひとひら》また一枚としらべなば、我はありし昔のまゝなりと録《しる》さるゝ紙の今|猶《なほ》あるを見む 一二一―一二三
されどこはカザールまたはアクアスパルタよりならじ、かしこより來りてかの文書《かきもの》に係《たづさ》はる者或ひはこれを避け或ひはこれを縮《ちゞ》む 一二四―一二六
さて我はボナヴェントゥラ・ダ・バーニオレジオの生命《いのち》なり、大いなる職務《つとめ》を果さんためわれ常に世の心勞《こゝろづかひ》を後《あと》にせり 一二七―一二九
イルルミナートとアウグスティンこゝにあり、彼等は紐によりて神の友となりたる最初の素足《すあし》の貧者の中にありき 一三〇―一三二
ウーゴ・ダ・サン・ヴィットレ彼等と倶《とも》に茲《こゝ》にあり、またピエートロ・マンジァドレ及び世にて十二の卷《まき》に輝くピエートロ・イスパーノあり 一三三―一三五
豫言者ナタン、京《きやう》の僧正クリソストモ、アンセルモ、及び第一の學術に手を下すをいとはざりしドナートあり 一三六―一三八
ラバーノこゝにあり、また豫言の靈を授けられたるカーラブリアの僧都ジョヴァッキーノわが傍《かたへ》にかゞやく 一三九―一四一
フラア・トムマーゾの燃ゆる誠《まこと》とそのふさはしき言《ことば》とは我を動かしてかく大いなる武士《ものゝふ》を競《きそ》ひ讚《ほ》めしめ 一四二―一四四
かつ我とともにこれらの侶を動かしたりき。 一四五―一四七
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第十三曲
わが今視し物をよくさとらむとねがふ人は、心の中に描きみよ(しかしてわが語る間、その描ける物を堅《かた》き巖《いはほ》の如くに保《たも》て) 一―三
空氣いかに密なりともなほこれに勝つばかりいと燦《あざや》かなる光にてこゝかしこに天を活《い》かす十五の星を 四―六
われらの天の懷《ふところ》をもて夜も晝も足れりとし、轅《ながえ》をめぐらしつゝかくれぬ北斗を描きみよ 七―九
またかの車軸――第一の輪これがまはりをめぐる――の端《はし》より起る角笛《つのぶえ》の口をゑがきみよ 一〇―一二
即ちこれらのもの己をもてあたかもミノスの女《むすめ》が死の冷《つめた》さを覺えし時に造れるごとき徴號《しるし》を二つ天につくり 一三―一五
一はその光を他の一の内に保ち、かつ相共にめぐりつゝ一は先《さき》に一は後《あと》より行く状《さま》を 一六―一八
さらば眞《まこと》の星宿《ほしのやどり》と、わが立處《たちど》をかこみめぐる二重《ふたへ》の舞とをおぼろに認めむ 一九―二一
そはこれがわが世の習《ならひ》を超《こ》ゆること、さながら諸天の中の最《いと》疾《と》きものゝ※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]《めぐ》る早さがキアーナの水の流れに優《まさ》る如くなればなり 二二―二四
かしこにかれらの歌へるはバッコに非《あら》ずペアーナにあらず、三一《みつひとつ》言る神の性《さが》、及び一となれる神人《かみひと》二の性《さが》なりき 二五―二七
歌も舞も終りにいたれば、これらの聖なる光は、その心をわれらにとめつゝ、彼より此と思ひを移すを悦べり 二八―三〇
かの神の貧しき人の奇《く》しき一生を我に語れる光、相和する聖徒の中《なか》にて、このとき靜寂《しづかさ》を破りて 三一―三三
曰ふ。一の穗碎かれ、その實すでに蓄《たくは》へらるゝがゆゑに、うるはしき愛我を招きてさらに殘の穗を打たしむ 三四―三六
汝思へらく、己が味《あぢはひ》のため全世界をして價《あたひ》を拂はしめし女の美しき頬を造らんとて肋骨《あばらぼね》を拔きし胸にも 三七―三九
槍に刺され、一切の罪の重さにまさる贖《あがなひ》をそのあとさきになしゝ胸にも 四〇―四二
この二を造れる威能《ちから》は、凡そ人たる者の受くるをうるかぎりの光を悉《こと/″\》く注《そゝ》ぎ入れたるなりと 四三―四五
是故に汝は、さきに我汝に告げて、かの第五の光につゝまるゝ福《さいはひ》には並ぶ者なしといへるを異《あや》しむ 四六―四八
いざ目を開きてわが答ふるところを望め、さらば汝は汝の思ひとわが言《ことば》とが眞理において一となること圓の中心の如きを見む 四九―五一
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