[チェは創造が凡て同時にかつ瞬時に行はれしことをいへり。註繹者曰く、ダンテはこの説においてアウグスティヌス、ペトルス・ロムバルドゥス及びトマス・アクイナスに從へりと
三一―三三
【時を同じうして】以上三つの物の造らるゝと同時に
【純なる作用を】作用の純なる者即ち純なる形式(諸天使)
「物その形式を有するにいたれば直ちにこれに從つて作用をあらはすが故に」トマス・アクイナスはその『神學大全』において「形式は即ち作用なり」といへり(ノルトン註參照)
【宇宙の頂となり】エムピレオの天に置かれ
三四―三六
【純なる勢能】他の作用を受くるに過ぎざる者即ち純なる物質
【最低處】月天の下
【中央には】天使と地球の間には形式と物質との固く相結ばれる者即ち他の作用を受けつゝ他に作用を及ぼす諸天(天、二・一二一―三參照)置かる
三七―三九
【イエロニモ】ヒエロニムス。ラテン寺院の聖父にて、その譯にかゝるヴルガータ最も著はる(四二〇年死)
【録せる】テモテ書一・二の註に。トマスはその『神學大全』においてヒエロニムスの説を駁せり
四〇―四二
【眞】天使達が殘りの宇宙と同時に造られしこと
【作者達】聖經諸事の作者等。但し出處明らかならず、註釋者は「エクレジアスチクス」十八の一なる「永生者時を同うして萬物を造り給へり」及び創世記一の一(トマス曰く。太初に神天地を造り給へりと創世記一の一に見ゆ、もしこれらより先に造られし物あらばこの事眞ならじ、是故に天使は形體的自然より先に造られたるにあらずと)を擧ぐ
四三―四五
【諸※[#二の字点、1−2−22]の動者】諸天を司る天使達
【全からざりし】運行すべき諸天なくば運行を司る諸天使何ぞその務を果すをえむ、務を果す能はざるはその存在の意義なきなり、全からざること知るべし
四六―四八
【これらの愛】即ち天使
【いづこに】「宇宙の頂となり」(三二―三行)といひ、かれらがエムピレオの天にて造られし意を表はせばなり
【いつ】その餘の宇宙と同時に(一三行以下)
【いかに】「純なる作用」(三三行)として
四九―五一
以下六六行まで、背ける天使と忠なる天使とについて
【二十まで】當時の神學説に從ひ、天使の創造とその一部の墮落とが殆ど同時なりしをいへり
【汝等の原素】地水火風の四原素、その中最下方に在る物は地
【亂し】地、三四・一二一以下參照
五二―五四
【技】神(一點[#「一點」に白丸傍点])のまはりを舞ひめぐること
五五―五七
【墮落】天使の一部の
【宇宙一切の重さに】即ち地球の中心にありて(地、三四・一一一並びに註參照)
【者】魔王ルチーフェロ
五八―六〇
【善】神の
【悟る】神を
六一―六三
【功徳】謙りて神恩を受くること(次聯參照)
【視る】神を
【意志備りて】罪を犯す能はざるまで
六四―六六
【恩惠を】神恩を受くるはその事既に功徳なり、而して喜びて神恩を迎へ入るゝ情愈※[#二の字点、1−2−22]切なればこの功徳またいよ/\大なり
六七―六九
【集會】天使達
七〇―七二
以下八四行まで、天使の能力について。ベアトリーチェは天使に了知及び意志あることを否定せず、されど記憶あることを絶對に否定す、即ちこの點においてやゝトマスの説と違へり
七三―七五
【言葉の明らかならざる】特に記憶について言ふ、即ちこの語を普通に用ゐらるゝ意義に從つて一觀念または一事實を再び心に呼起す力とする場合の如し、天使はかゝる力を有せず、有するの要なければなり
七六―八一
神は一切の事物を視給ふ、故に一切の事物皆現在なり、諸天使また絶えず神の鏡に照してよく一切の事物を視る、故に新しき物入來りてその視る力を阻むことなし、視る力|阻《はば》まれず忘るゝことあらずば何ぞまた憶ひ出づべきことあらむ
【新しき物】新しき物入來りて過去の事物の印象を亂す時、始めてこゝに忘るゝことあり思ひ起すの要生ず
【想の分れたる爲】per concetto diviso 印象心を離れ(新しき物のため)現に心に在らざるため、但し異説あり
八二―八四
【夢を見】眞理の基礎なき事物を想像し(天使に記憶ありといふ如き)
【罪も恥も】前者は夢を眞《まこと》と信ず、咎《とが》無智にあり、後者は自ら眞と信ぜずして虚榮の爲に眞なりといふ、咎惡意にあり
八五―八七
以下一二六行まで、ベアトリーチェは當時の説教者等を難ず
【同一の路】眞理に達するの路
八八―九〇
【曲げらる】曲解せらる
九一―九三
【血】殉教者の
九四―九六
【福音ものいはじ】説教者等福音を宣べ傳へずしてかゝる雜説にのみ空しく時を費すをいふ
九七―九九
福音の眞義に關係なき雜説の例を擧ぐ
【クリストの】キリスト磔殺の時地上遍く晦冥となりしを(マタイ、二七・四五等)日蝕の作用に歸せんとてこの説を爲す
【月退りて】當時月は太陽と反對の天
前へ
次へ
全121ページ中114ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
山川 丙三郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング