の四分の一にさしかゝるとき、第六時終りて第七時これに次ぐ
アダムの樂園に在りし間の時については古より種々の想像説あり、短きは數時間長きは三十四年なりき、ダンテは前説に從へり


    第二十七曲

聖ピエートロ(ペテロ)その繼承者の腐敗を嘆ず、かくて全衆みなエムピレオの天に歸れば、ダンテは俯きてわが世界を見、後ベアトリーチェと共に第九天(プリーモ・モービレ)にいたる
四―六
【耳よりも目よりも】天堂の歌の妙《たへ》なるに醉ひ、また全衆がさながら宇宙の一微笑の如くその悦びを表はしつゝ美しき光を放つ光景に醉ひ
七―九
【富】天上の聖徒達はその富即ち福を失ふの恐れなく、またその福にてすべて足るがゆゑに他に求むる物あらじ
一〇―一二
【四の燈火】三使徒とアダム。この中最初に來れるものはピエートロなり(天、二四・一九以下)
一三―一五
義憤の爲聖ピエートロの光赤色に變ず
【木星もし】木星もし火星と光を交換し、その白色變じて赤色とならば
一六―一八
【次序と任務とを】天上にては言ふにも默すにも動くにも止まるにも各※[#二の字点、1−2−22]その時(次序)あり、聖徒達は各※[#二の字点、1−2−22]この次第に從つて或は言ひ或は動く(任務)、しかしてこれを定むる者は即ち神なり
一九―二一
【是等の者】共通の情は諸聖徒をしてペテロと同じく義憤を起さしむ
二二―二四
【わが地位】法王の位(ペテロは地上最初の法王なればなり)。これを奪ふ者とは主として神曲示現當時の法王ボニファキウス八世を指す
【神の子の】その器に非ずしてその位に坐す、是即ち纂奪者也、たとひ世に法王と認めらるともキリスト、法王と認め給はじ、特にボニアァキウスは墮地獄の罪人かつは不正行爲によりて法王となれる者なれば(地、三・五八―六〇註及び地、一九・五二以下參照)位に在りとも無きに等し
二五―二七
【わが墓所】ローマ。傳説によれば使徒ピエートロかの地に葬らる
【血と穢との溝】無辜《むこ》の血の流され(地、二七・八五以下參照)種々の罪惡の行はるゝところ
【悖れる者】ルチーフェロ。神に背きて天より逐はれし魔王は聖なるローマが罪惡の府となれるを見、地獄にありてその心を慰むるなり
二八―三〇
【色】赤色。オウィディウスの『メタモルフォセス』(三・一八三以下)に、衣を脱ぎしディアナの姿を敍して「對へる日の光に染みし叢雲《むらくも》の色、または紅の朝の色」云々とあるに據れり
三一―三三
【淑女】身に恥づることなけれど、他人の罪を聞くに恥ぢてその顏を赤くす
三四―三六
【此類なき威能】キリスト。十字架上に死し給ひし時天暗くなりしこと聖書に見ゆ(マタイ、二七・四五等)。白色の光赤色に變じ、歡樂喜悦の光景悲憤のそれに變じたるを形容してかく
四〇―四二
【クリストの新婦】寺院。天、一〇・一三九―四一に「神の新婦」といへるもの
【わが血及び】われピエートロ及び初代の法王達が教へに殉じて寺院の基を起しかつこれを固めしは
【リーン、クレート】リーヌス、クレートゥス。いづれも一世紀にローマの僧正たりし殉教者
四三―四五
【樂しき生】天上無窮の幸福
【シスト、ピオ、カーリスト、ウルバーノ】いづれも二三世紀頃ローマの僧正たりし殉教者
四六―四八
同じ教へを奉ずる民相分れ、一は法王の右に坐してその愛顧を得、一は法王の左に坐してその憎惡を受くることはわれらの志にあらざりき
ダンテの時代における朋黨を指していへり、即ちグエルフィが法王の寵を得ギベルリニがこれに敵視せられしこと。但し左右[#「左右」に白丸傍点]の語は聖者より出づ(マタイ、二五・三三)
四九―五一
キリストの我に委ね給ひし天國の鑰を旗標《はたじるし》として同じキリスト教徒と戰ふこともわれらの志にあらざりき
十三世紀の頃法王の軍は寺院の鑰の標《しるし》をその軍旗に用ゐきといふ
【受洗者と戰ふ】主としてボニファキウス八世がコロンナ一家と戰へるを指す、地、二七・八八に「その敵はいづれもキリスト教徒にて」といへるもの即ち是
五二―五四
法王等がわれペテロの像を表はせる印をその文書に捺してシモニアを行ひ人を僞ることもわれらの志にあらざりき
五五―五七
【暴き狼】強慾非道の僧侶等。この語聖書より出づ(マタイ、七・一五)
五八―六〇
聖ペテロの豫言
【カオルサ人等】カオルサ(南フランス)の人にて一三一六年法王となりしヨハンネス二十二世(天、一八・一三〇以下並びに註參照)及びその一味の者
【グアスコニア人等】フランスのガスコエアの人にて一三〇五年法王となりしクレメンス五世(地、一九・八二―四並びに註參照)及びその一味の者
【我等の血を】われらの血にて築き固めし寺院を横領し、その産を私せんとす
【善き始め】創立當時の寺院を指す
六一―六三
【シピオ】スキピオ。ローマの大將
前へ 次へ
全121ページ中109ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
山川 丙三郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング