四の光】始祖アダムの靈
八二―八四
【第一の力】神
【第一の魂】最初の人間即ちアダム
九一―九三
【熟して結べる】アダムは造られし時既に大人なりければかく
【唯一の】スカルタッツィニ曰く。エヴァはアダムの一部なれは特にいはず、アダムがアダムとエヴァの意に用ゐられし例聖書に多し(創世、三・二二―四、ロマ、五・一二以下等)と
【新婦と】いかなる新婦もアダムの裔なればその女に當り、アダムの裔なる男子に嫁すればその子婦《よめ》に當る
九七―九九
【包まれ】衣などに
【願ひ】包みし物より脱るゝ願ひ。但し包みし物の動くによりてその内なる獸の願ひの表はるゝを、蔽はるゝ光の一きは輝き渡るによりてその内なるアダムの願ひ(ダンテの望みをかなへんとするの)の現はるゝに比べしのみ
一〇六―一〇八
【鏡】神(天、一五・六一―三參照)
【萬物を】萬物は皆完全に神の鏡に映ず、故に神を視る者よく萬物を視る、されど一物として完全に神を映《うつ》すはなし
【己に映せど】〔fa di se` pareglio〕 註釋者曰く。pareglio(=parelio)とは太陽の光線の屈折によりて空中に現はるゝ他の太陽の如きものをいふ、反映の義これより生ず、即ちこの句は己を(萬物の)反映者たらしむ換言すれば(萬物を)己に映らしむる意なりと
但しこの項異本あり、また異説多し
一〇九―一一一
以下一一四行まで、ダンテの問四あり、(一)アダムの造られし時より今に至るまで幾年經たるや、(二)アダムは樂園に幾許の間住みしや、(三)その犯せる罪の性質、(四)その用ゐし言語
【長き階】諸天
【高き園】淨火山上の園即ち地上の樂園
一一二―一一四
【大いなる憤】人類に對する神の怒り
一一五―一一七
第三問の答。但し當時の神學説に據れり
【流刑】樂園を逐はれし事。その眞の原因は木の實を食へるその事に非ずしてこれに伴ふ不從順と傲慢となり、即ち食ひて神命に背《そむ》けるのみならず、その食へるは己を神の如くにせんとの僭上心より出でしなり
トマス・アクイナスの『神學大全』(二、二、一六三・一)に曰く。人間の最初の罪は己が度を超えて靈の福を望めるにあり、これ傲慢に屬す、知るべし始祖の最初の罪は傲慢なりしを
一一八―一二〇
以下一三三行まで第一問の答。アダムは地に住めること九百三十年(創世、五・五)、リムボに在ること四千三百二年なり、而してキリストの死即ちアダムがリムボを出でし時より神曲示現の年までは千二百六十六年(地、二一・一一二―四並びに註參照)なればアダムの造られし時よりこの時に至るまでの間はすべて六千四百九十八年なり
ダンテは古の史家の説に從ひ、人類の創造よりキリストの死にいたるまでの間を五千二百三十二年となせるなり
【處】地獄のリムボ。ベアトリーチェこゝに降りウェルギリウスに請ひてダンテの急を救はしむ(地、二・五二以下參照)
【この】天上の諸聖徒の
一二一―一二三
【すべての光】太陽が一年間に通過する十二宮の星
一二四―一二六
以下一三八行まで第四問の答
【ネムブロット】バベルの高塔(成し終へ難き業[#「成し終へ難き業」に白丸傍点])の建築者として(地、三一・七六―八並びに註及び淨、一二・三四―六並びに註參照)
【悉く絶え】ダンテは『デ・ウルガーリ・エーロクエンチアー』(一・六・四九以下)に、アダムの用ゐし言葉がバベルの高塔建築の時まで用ゐられその後もヘブライ人によりて用ゐられしこと即ちアダムの言葉はヘブライ語なりしことをいへり、こゝにてはこの説を正してかく
一二七―一二九
【天にともなひて】星辰の影響に從つて
【理性より生じ】言語もまた理性の一産物なり
一三〇―一三二
思想感情を表白するは自然の作用なれども、その方法にいたりては人間自由の選擇に屬す
一三三―一三五
われ在世の頃神はI《イ》と呼ばれたり
Iの由來知り難し、恐らくはダンテの創意ならむ、アダムの用ゐし言語はすべて絶えたりといへば、ダンテの示さゞるかぎり、その意推し量《はか》らんやうなし
この語と一三六行の EL については異本多し(委しくはムーアの『神曲用語批判』四八六頁以下及びスカルタッツィニ註參照)
一三六―一三八
【EL】ヘブライの古語にて強き者の義なりといふ。この語『デ・ウルガーリ・エーロクエンチアー』一、四・二九にも見ゆ、但しアダムの用ゐし語として
一三九―一四二
第二問の答
【山】淨火の山、こゝにてはその巓にある樂園を指す
【第一時より】第一時は日出時に始まる、今傳説に從ひ天地の創造を春とすれば日出は午前六時頃なり、故にアダムが樂園に在りし間は午前六時頃より正午乃至午後一時(第七時)までの間即ち六時間乃至七時間なり
【日の象限を】太陽が象限、即ち圓の四分の一(六時間の行程、晝夜平分時にては日出より正午まで)を轉り終りて他
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