にあらざるかと
【焔】聖ヨハネの光
七―九
【汝の魂】愛の向ふところを問へり
一〇―一二
【アナーニア】ダマスコの人、主の命に從ひサウロ(使徒パウロ)を訪ひて手をその上におき、彼をして再び物を見るをえしむ(使徒、九・一〇以下參照)
一三―一五
【絶えず我を】ベアトリーチェは愛の火をもてダンテの目より入來れり、即ちダンテはベアトリーチェのけだかき美しき姿を見て愛の火に燃えしなり
一六―一八
天堂の諸聖徒を凡て滿足せしむる善即ち神こそ、愛の我に與ふる強弱一切の刺戟の始めまた終りなれ。換言すれば、わが愛といふ愛ことごとく神にむかふ
【わが爲に讀むかぎりの文字の】di quanta scrittura Mi legge 異説多し。スカルタッツィニ曰く、淨、二・一一二にては愛、心の中に物言ひ、同二四・五二以下にては愛、衷に口授し、こゝにては愛、衷なる文字を讀む、こは衷なる書《ふみ》に既に録《しる》されし文字即ちダンテのいだく愛の事なり、されば「愛のわが爲に讀むかぎりの文字」とは愛に關してわが内にある凡てのもの即ちわがすべての愛をいひ、この愛を記録の一部心の書《ふみ》の一筆の如く見なせるなり、ダンテの言は歸する所、わがすべての愛の目的《めあて》は神なりといふに同じ、またこれに加へて「或ひは低く或ひは高く」(原、或ひは輕く或ひは強く)といへるはそのいだく愛といふ愛ことごとく神に獻げらるとの義なり云々
【アルファ、オメガ】始め、終り。ギリシア字母の最初の文字と最後の文字(默示、一・八參照)
一九―二一
【我をして】次の如く我に問ひ我をして
二二―二四
さらに明細に汝の思ふ所を述べ、誰が汝をして神を愛するに至らしめしやを我に告ぐべし
二五―二七
【こゝより降る】天より降る權威ある言、即ち聖書に現はるゝ天の啓示。ダンテの愛の動機は人と天との二つの教へなり
二八―三〇
以下三六行までの大意左のごとし
愛の向ふ所善にあり、善いよ/\全ければ愛またいよ/\大なり、神は至上の善にまします、故にこれを愛するの愛從つて最も大いならざるべからず
【その善なるかぎり】即ち善と認めらるゝかぎり
【知らるゝとともに】智によりてその何たること悟らるゝと同時に
三一―三三
神以外の善はたゞ至上の善なる神の一顯現、その榮光の一光輝に過ぎず
三四―三六
【この證】萬物にまさりて神を愛すべき理由
【眞理】神は至上の善なること
三七―三九
【永遠の物】諸天、天使、及び人の魂等。これらの被造物は皆神を慕ひ神を望む
【示すもの】物皆その第一原因と結ばんとするの願あることを教へし哲人として註釋者多くはアリストテレスを擧ぐ。但し異説多し
四〇―四二
【眞の作者】その言に僞りなき者即ち神。神自らモーゼに告げて「我汝に一切の善を見すべし」(ヴルガータ、出エジプト、三三・一九)といひ自らその善の完全なるを明《あか》し給へり
四三―五五
【尊き公布】默示録。特にその一の八に「我はアルファなりオメガなり始めなり終りなり」と言給へる全能者の言を傳へて神は一切の善の源なる意を寓し示せること
【こゝの秘密を】天上の秘密を聖書の他の部分にまさりて強く下界に響かしむること
四九―五一
【幾個の齒にて】齒にて噛むは刺戟を與ふるなり、汝の愛を神に向はしむる者理性と天啓の外に猶|幾許《いくばく》ありやいへとの意
五二―五四
【クリストの鷲】聖ヨハネ。默示録四・七に出づる鷲を望ヨハネの象徴と見なす説にもとづき、キリスト教藝術にてはヨハネを往々鷲にて表はす
【隱れ】我に隱れ。ダンテはヨハネの思ひのある所を直ちにさとれるなり
五五―五七
【齒をもて】心を神に向はしむる一切の刺戟は皆我愛と結び合ひ、我をしてわが凡ての愛を神にさゝぐるにいたらしむ
五八―六〇
天地人類の存在によりて造物主の至善を知り、人類を救はん爲キリストの死し給ひし事を思ひて神の至愛を知り、天上永遠の幸福(望むもの)を思ひて神の至恩をしのび
六一―六三
【認識】神は至上の善なりとの。「生くる」は確たる
【悖れる愛】地に屬する物の愛(淨、三一・三四―六參照)
六四―六六
【葉】被造物、即ち神(園丁)のしろしめす宇宙(園)に遍く滿つるもの。「隣」を愛する(マタイ、一九・一九等)の愛を指す
六七―六九
【聖なり】默示録四・八に出づる頌詠によりて全衆神を讚美せるなり
七〇―七二
【物見る靈】spirto visivo 視神經を往來して、物を見るをえしむる力、即ち視力(『コンヴィヴィオ』二・一〇・三二以下參照)
【膜より膜に】光は眠れる者の目の膜より膜に進み入り、目の視力はこれに向ひて進むがゆゑにその人覺む
七三―七五
【判ずる力】estimativa 思ひめぐらす力。この力によりて己が覺めし次第を知り、あやしまずして己が前にあるものを見るを得
七九―八一
【第
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