ヘ一三一二年(即ちハインリヒがローマに帝冠を戴ける年)以前といふ如し
【銀をも疲れをも】富を求めず戰ひの疲れを厭はざること
九一―九三
【信ずまじき】己が目前に起るを見ん人もなほ信ずまじき異常のことゞも
九四―九六
【聞きたる事】地獄淨火にて聞きたる豫言(四―六行註參照)
【年】原、「囘轉」(太陽の)
九七―九九
【隣人】同郷人。その勝誇るを妬むなり
【汝の生命は】かれらは罪の報を受けて亡び、汝は永く美名に生くべし
一〇〇―一〇二
【織物】物語。これが經《たていと》を張るは問ふなり、緯《よこいと》を入るゝは答ふるなり
一〇六―一〇八
【思慮なき人に】備へず慮らずして命運の打撃を受けなばその、痛いよ/\甚だしからむ
一〇九―一一一
【最愛の地】フィレンツェ
【その他の地】流寓の地(複數)
【わが歌の爲に】我もし忌憚なく歌はゞ、その詩、人の怨みを招きて寄寓すべき處さへなきにいたるの恐れあり
一一二―一一四
【淑女の目】天、一・六四以下參照
一一五―一一七
【光より光】星より星
【辛かるべし】agrume は昔葱、大蒜《にんにく》等の如く舌を刺すに似たる味あるものをいへり
一一八―一二〇
されどまたもし實を語らずば、名を後の世に殘すをえざらむ
一二一―一二三
【寶】カッチアグイーダ
一二四―一二六
【己が罪または】罪己にあるかさらずば己が親戚知友等にありて心その爲にやましき者は
一二七―一二九
【瘡ある處は】汝の言を聞きて苦痛を感ずるだけの弱みある人には苦痛を感ぜしむるがよし
一三三―一三五
山高ければこれを撃つ風いと強し、かくの如く、汝の歌の中なる人はいづれもその名世に聞えまたは現に時めき榮ゆる者のみなればそを叱咤する汝の聲は強かるべし、而してかゝる者をもたゞ眞理に從つて恐れず憚らず攻める事は即ち攻める人の價値をば遺憾なく表はす所以なり
一三九―一四二
【その根知られず】例の出處なる(即ち例として擧げらるゝ)人物が世に知られず
【明らかならざれは】適切なる例を缺く爲、具體的に證明し難きなり
【安まらず】滿足せず


    第十八曲

カッチアグイーダの告ぐる所によりてダンテは火星の十字架の中なる多くの靈の名を知りて後、ベアトリーチェと共に第六天(木星)にいたり、正義を地上に行へる者の眞の相連りて種々なる形をその光に現はすを見る
一―三
【鏡】カッチアグイーダ。聖徒は神の光を受けてこれを反映《てりかへ》らしむる鏡なれはかく
【思ひ】verbo(語《ことば》)、こゝにては無聲の語即ち思ひの義
カッチアグイーダ語り終りて默しつゝ天上の祝福を思ふ樂しき思ひに歸ればダンテはまた己が思ひに耽りつゝその美名に關する豫言の喜びをもて追放その他行末の非運に關する豫言の悲しみを和げゐたるなり
四―六
【一切の虐を】正義に從つて賞罰を行ひ給ふ神(ロマ、一二―一九參照)
七―九
【慰藉】ベアトリーチェ
一〇―一二
【導く者なくば】神恩特に下るにあらざれば
一三―一五
【わが情は】天上の愛ベアトリーチェの目に輝きてダンテの心の中なる一切の雜念を逐ひ拂へるなり
一六―一八
【永遠の喜び】聖徒の永遠の喜びなる神の光
【第二の姿】反映せる光。ダンテは神の光を直接に見しに爲らず、ベアトリーチェの目によりて見しなれば
一九―二一
【身を轉して】カッチアグイーダを見てその言を聽け
二八―三〇
【木】天堂。世にある木は根によりて生き、期《とき》いたりて初めて實を結び年毎にその葉を失へどもこの木は然らず、頂によりて生き(至高の天にいます神よりその生を安くるが故に)、たえず實を結び(新なる聖徒をえ)、永久に葉を失はじ(その美その福祉永遠に亘る)
【第五座】第五天
三一―三三
【ムーザ】詩人。いかなる大詩人にも良き材料を供給するほど
三四―三六
【今】異本、今[#「今」に白丸傍点]の字なし
【その疾き火】雲の火即ち電光
三七―三九
【ヨスエ】ヨシュア。モーゼに次いでイスラエル民族を導ける舊約の偉人、その事蹟ヨシェア記に委し
【言と爲と】名のいはるゝと動くと
四〇―四二
【マッカベオ】ユダス・マッカベウス。ヘブライ人の自由の爲にシリアの暴君と爭へるもの(『マカベ』前第三章以下)
【獨樂】paleo 棒の先に糸をつけ、それにて打ちてまはす獨樂。糸の爲に獨樂の※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]る如く、喜びの爲にかの光めぐるなり
四三―四五
【カルロ・マーニョとオルランド】キリスト教の信仰の爲、異教徒と戰へる勇者として(地、三一・一六―八註參照)
【目】鷹匠の
四六―四八
【グイリエルモ、レノアルド】フランス中古の物語に名高きオレンジ伯ウイリアム及びこれに從ひてサラセン人と戰へりといふリノアルド(ルヌアール)
【ゴッティフレーディ】ゴットフレード・ド・ブイヨン(一一〇〇年死
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