フ婿のウベルティーノは、舅ベルリンチオーネがその第三女をアーディマリ家の者に與へて(九七―九行註參照)彼(ウベルティーノ)をば彼等(アーディマリ家)の縁者たらしめしを喜ばざりき
一二一―一二三
【カーボンサッコ】カーボンサッキ家はフィエソレよりフィレンツェ舊市場(Mercato Vecchio)のあたりに移りしものにて十二世紀の頃市の高官この家族より出でたり
【ジウダとインファンガート】ジウディ、インファンガーティの兩家。いづれも十二世紀の頃に榮えしフィレンツェの家族
一二四―一二六
フィレンツェの昔の城壁の門の一なるペルッツァ門(Porta Peruzza)が「ラ・ペーラ」即ちペルッツィ(Peruzzi)一家の名に因みて名づけられしものなりとは(今は亡びて知る人もなき「ペーラ」の一家が城壁の門に名を與ふるほど昔盛なりしとは)誰か信ぜむ
一二七―一二九
【領主】皇帝オットー三世の代理者としてフィレンツェに任せるフーゴ侯爵
フーゴは一〇〇六年聖(使徒)トマスの祭日(十二月二十一日)に死せり、人々これをバディーア僧院に葬り、かつ年々この日において記念の祭典を行へり
【紋所】紅白七條の縱線。但しこの紋を用ゐし騎士の家族によりて多少の變更あり、故に「分け用ゐる」といへり
一三〇―一三二
【騎士の】フーゴはプルツィ、デルラ・ベルラ、ジャンドナーティ等フィレンツェの諸家族に騎士の位と貴族の殊遇とを與へたり
【卷くもの】ジヤーノ・デルラ・ベルラ。十三世紀の末、庶民の味方となりて權門勢家に反抗し、遂に郷國を棄てゝフランスに走れり。デルラ・ベルラ家の紋はフーゴの紋の周圍を細き金線にて卷けるもの
一三三―一三五
【グアルテロッティ、イムポルトゥーニ】ともに一時盛なりしフィレンツェの家族
【隣人等】モンテブオーニ城よりフィレンツェに移住せるブオンデルモンティ家(六四―六行註參照)
【ボルゴ】ボルゴ・サンチ・アポストリ。グアルテロッチとイムポルツーニの住みしところ、後ブオンデルモンティこの兩家の隣に住めり
一三六―一三八
【家】アーミデイ家。アーミデイ、ブオンデルモンティ兩家の爭ひについては地、二八・一〇六―八註參照。爭ひの始めは破約者に對するアーミデイ家の怒りなれば義憤[#「義憤」に白丸傍点]といへり、この怒りのためブオンデルモンテ殺害せられ、兩家の爭ひはひいて全市民の爭ひとなり、多くの人々血を流し、市その平安を失へり
一三九―一四一
【人の勸】ドナーティ家の一婦人己が娘をブオンデルモンテに嫁《とつ》がせんとて破約をこれに勸めしをいふ
一四二―一四四
【神汝を】汝もしエーマ川に溺死してフィレンツェに入來らざりせば
【エーマ】ヴァル・ディ・グレーヴェなる小川の名。モンテブオーニよりフィレンツェに來るものこの川を過ぐ但しモンテブオーニの沒落は一一三五年にて、ブオンデルモンテの殺害は一二一五年の事なれば、一四〇行のブオンデルモンテは破約者を指せるに非ずしてその家族を指せるもの、また「汝はじめて」といへるはこの家族(即ち被害者の父祖)がはじめてフィレンツェに移り來れるをいへるならむ
一四五―一四七
【缺石】破損したるマルチの像にてポンテ・ヴェッキオの一端にありしもの(地、一三・一四五―七註參照)。ブオンデルモンテの殺されし處は即ちこの像の下なりき、故に被害者を指してマルテの牲《いけにへ》といへり
一五一―一五三
【百合】フィレンツェの旗(一五四行註參照)
【倒に】中古敵の旗を奪ふ時は竿を倒さにして戰場を引※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]し侮蔑の意を示す例ありきといふ。フィレンツェ軍が常に戰ひに勝ち、旗を敵手に委ねしことなき意
一五四
【紅に】市の昔の紋章は赤地に白の百合なりしが一二五一年グェルフィこれを變へて白地に赤の百合となせり


    第十七曲

カッチアグイーダさらにダンテの問いに答へてその行末の事を豫言し、これに流刑の憂さつらさを告げ、かつその冥界の見聞を忌憚なく世に傳へんことを勸む
一―三
【者】パエトン(フェトン)。父アポロン(日)に請ひその許をえて火車を轉らせるため慘死す(地、一七・一〇六―一四註參照)、これ世の父たる者をして子の請ふ所に戒心せしむる一教訓なり
【クリメーネ】クリュメネー。パエトンの母。エパポス(ゼウスとイノの間の子)なる者パエトンを罵り汝は母のたゞ言を信じて父ならぬ父に誇るといふ、パエトン即ち母の許に行き己が父の果して日の神なるや否やを質《たゞ》せり(オウィディウスの『メタモルフォセス』一・七四八以下參照)
四―六
【彼の如く】パエトンがエパポスの言を聞きて眞を知らんと欲するの情切なりし如く、ダンテは己が未來に關しファリナータ(地、一〇・七九以下)、ブルネット(地、一・六一以下)、クルラード(淨、八・一三三以下
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