へり
【從ひ從ふる獅子】城に從ひ城を從ふる獅子。カスティール王家の紋所は二頭の獅子と二個の城より成る、即ちその半には獅子城の下にあり(從ふ)、半には獅子城の上にあり(從ふる)
五五―五七
【クリストの】キリスト教の熱愛者
【敵につれなき】一〇〇―一〇二行參照
【剛者】イスパニアの高僧聖ドミニクス(一一七〇―一二二一年)
五八―六〇
【豫言者】夢によりてわが兒の常人ならざるべきを判ぜるなり。傳へ曰ふ、ドミニクス未だ胎内にありし時、その母夢に一匹の小犬を生む、これに黒白の斑あり、口には燃ゆる炬火《たいまつ》をくはへゐたりと(黒白の斑はドミニクス派の僧服を表はし、炬火は聖者の熱情をあらはす)
六一―六三
【聖盤】洗禮の水を容るゝ器《うつは》。洗禮によりて信仰と縁を結べるなり
【相互の救ひ】ドミニクスは信仰の有力なる保護者となり、信仰はドミニクスを永遠の福祉に導く
六四―六六
【女】教母。小兒に代りて授洗僧に答へ、儀式を脱《おち》なく濟せる女
【嗣子等】その派の僧達
【眠れる間に】教母は小兒の額の中央に光明燦かなる一の星あるを夢に見たり、これ彼が世の光となり諸民を導いて永遠の救ひに到らしむべき瑞相なりき
六七―六九
名を實に配《そ》はしめん爲、天の靈感父母にくだり、彼をドメニコ(=Dominicus 主のものなる)と名づけしむ
七〇―七二
【その園】寺院
七三―七五
【第一の訓】「汝完からんと思はゞ、往て汝の所有を賣りて貧者に施せ」(マタイ、一九・二一)第一のは主なるの義。トマスも清貧をキリストの訓《さとし》の第一に擧げたり
聖ドミニクスは未だ若かりし時、書籍やその他の所有物《もちもの》を賣りてその得たる價を貧民に施す等慈善の行爲多かりき
七〇行より七五行に亘る二聯にキリストといふ語三たび出づ、これ押韻の際ダンテは他の韻語を決してこれに配せざればなり、天、一四・一〇三以下、同一九の一〇三以下及び同三二・八二以下にもこの例あり
七六―七八
【目を醒し】ドミニクスはその幼兒屡※[#二の字点、1−2−22]臥床をぬけいで、大地に臥しつゝ神に祈りをさゝげたりといふ
【このために】安逸を棄てゝ神に事《つか》へん爲に
七九―八一
【フェリーチェ】Felice の(幸運なる)、かゝる子を生みたる彼の父は誠にその名の如く福なり
【ジョヴァンナ】Giovanna(主の惠の義といふ)
【若しこれに】ヘブライの原語の意義明らかならざればかく曰へり
ダンテはこれらの言葉によりて、天上の聖徒の知識のなほ不完全なるを示せるか(天、四・四九以下參照)、或ひはその自ら言はんと欲する所これらの言葉に現はれしなるか、明らかに知り難し
八二―八四
今の世の人法學または醫學に走りて世の榮達を求むれども、彼は然らず、たゞ靈の糧を求め
【オスティア人】オスティアのカルディナレ及び僧正なりしエンリーコ・ディ・スーザ(一二七一年死)。寺院法に精しくその註疏及びその他の著作あり
【タッデオ】タッデオ・ダルデロット(一二九五年――或曰、一三〇三年――死)。フィレンツェの人にて名醫の聞え。高かりし者、醫學に關する著作多し
【世の爲】世に屬する利慾のため
【まことのマンナ】キリストのまことの教へ。マンナについては淨、一一・一三―五註參照
八五―八七
【葡萄の園】寺院。園をめぐるは寺院を保護するなり
【白まむ】白むは縁の色あせて枯るゝなり、牧者其人をえざれば寺院の敗頽するにたとふ
八八―九〇
【法座】法王を指す。ドミニクスが法王インノケンティウス三世の許をえんとてローマに赴けるは一二〇五年の事なり
【これに坐する】法王の位その物の罪に非ずして法王其人(特に神曲示現當時の法王ボニファキウス八世)の罪なり
九一―九三
【六をえて】不正所得を求むること(即ちその三分一または二分一を善用する條件にて)
【最初に】空《あ》くべき僧職を求めて己まづこれに就かんとすること
【什一】什一を私用に供すること。人々所得の十分一を獻じ、これを貧者の用に供する例あり、モーゼの律法にもとづく(申命、一四・二八以下參照)、これを什一といふ
以上は皆當時の僧侶の貪り求めし物なれば特に記して彼等の非を擧げしなり
九四―九六
【二十四本の草木】二個の輪を作りてダンテとベアトリーチェとを圍める二十四の靈
【種】信仰。聖徒は信仰の善果《よきみ》なり
【迷へる世】眞の信仰を離れて踏迷へる異端の徒、特にフランスのアルビジョンより起れるアルビジョアの異端
九七―九九
【使徒の任務】法王(インノケンティウス三世)の彼に與へし權
ドミニクスは異端者と戰はんため、プレディカトリ派を起しこれが准許を法王インノケンティウス三世に乞ひ辛うじてその口頭の許を得たり(正式の准許を得たるは一二一六年にて、時の法王ホノリウス三世よりなりき)
一〇〇―一〇
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