―一一七
【他の】貧の懷以外の。傳に曰く、死の近づくを知るやフランチェスコはその愛する寺院なるサンタ・マリア・デーリ・アンジェリに移るを願ひ、かしこにて貧に對する最後の愛を表はさんため衣を脱し地上に臥してその生を終ふと
一一八―一二〇
聖フランチェスコの人となりより推して、これとともに寺院指導の任に當れる聖ドメニコの人となりを知るをえむ
【ピエートロの船】寺院。異端邪説迫害殉教等の浪荒き大海を渡りて眞《まこと》の信仰の湊にむかふ
一二一―一二三
【教祖】ドミニクス派の基を起せる聖ドミニクス
【良貨を】ピエートロの船といへるに因みて。高徳の人となりて寶を天上に貯ふること
一二四―一二六
【群】ドミニクス派の僧侶等
【新しき食物】名譽地位ある僧職
【山路】salti 山や林の間の牧地
一二七―一二九
【乳】教への糧
一三〇―一三二
【牧者に近く】教祖の教へに從つてその派の戒律を守るをいふ
一三三―一三五
【微】朧にて解し難きこと
一三六―一三九
【願ひの一部は】疑ひの一は解くべし
【削られし木】わが削り取れる木片(迷はずは云々といへる言葉)の元木(出處即ちドミニクス派の僧の墮落)。但し異説多し
【革紐を纏ふ者】ドミニクス派の僧(この派の僧は革紐を帶とす)即ちわれトマス
異本、「非難」。これに從へば「迷はずばよく肥ゆるところといへる言葉の中の非難をさとるべければなり」


    第十二曲

トマス語り終れる時、ダンテとその導者とを圍み繞れる他の一群の靈あり、其一ボナヴェントゥラ・ダ・バーニオレジオ聖ドミニクスの物語をなす
一―三
【焔】トマス・アクイナス
【碾石】ベアトリーチェとダンテとを圍める十二の靈。天、一〇・九二にこれを花圈《はなわ》といへる如く圓く圍み、かつは水平に※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]轉するがゆゑに碾石《ひきうす》といへり
七―九
【笛】靈の樂器即ち諸聖徒の聲
【元の輝が】直接に照らす光線が反射する光線よりもつよく輝く如く
【われらのムーゼ】世の詩人。
【われらのシレーネ】世の謳歌者《うたひて》(淨、一九・一九―二一註參照)
一〇――一二
【侍女】イリス。タウマスの女(淨、二一・五〇)、虹の女神にて神話の神々特にヘラの使者たり
【二の弓】二重の虹
一三―一五
【外の弓】二重の虹の中、外の大なる虹は内の小さき虹の反映なりと信ぜられたればかく
【流離の女】ニンファ・エーコ(反響)。空氣と地の間の女、の嫉みによりて言語の自由を失ひ、たゞ人の物言ふを聞きてその最後の言葉を繰返すに過ぎず、このニンファ、ナルキッソス(地、三〇・一二八)を見これを戀ふれども及ばず、形體全く憔悴してたゞ骨と聲のみ殘り、後骨は岩に變じ、聲のみ今に生くといふ(オウィディウスの『メタモルフォセス』三・三三九以下參照)。流離[#「流離」に白丸傍点]はニンフェの常なり、(淨、二九・四―六參照)
外部の虹の、内部の虹より生るゝを、反響の、聲より生るゝにたとへしなり
一六―一八
【契約】ノア(ノエ)の洪水の後、神がノアとその全家及びこれと共にありし鳥獸と契約を立て、世に再びかくの如き洪水あらしめじと言ひ給ひしこと(創世、九・八以下)、虹はその契約の徴《しるし》なり(同九・一三―七)
一九―二一
【薔薇】二重の圓を作れる諸聖徒
【相適ひ】歌をも舞をも合せしをいふ
二二―二四
【祝】諸靈が倶に歌ひ互ひに照らしてその福を表はすこと
二八―三〇
【星を指す針】北極星を指す磁針 磁針は一二一八年既にイタリアの航海者に知られたり、一三〇二年に至りフラーヴィオ・ジョイアこれを完成す(パッセリーニ)
三一―三三
【我】ボナヴェントゥラ(一二七――九行註參照)
【彼の爲に】聖ドミニクスの偉大なるをあらはさんため(天、一一・四〇―四二、一一八―二〇參照)
三四―三六
【一のをる處には】ひとりの事のいはるゝ時には他のひとりの事もいはれ
三七―三九
【軍隊】信徒等。これをアダムの罪より救ひ、これが陣立を新ならしめんとて救世主血を流し給へり
【旗】十字架
【遲く、怖ぢつゝ、疎に】遲きは熱心の足らざるなり、怖るは異端の爲に信仰の動搖するなり、疎なるは數少きなり
四〇―四二
神はかく覺束なき信徒の名をはかり給ひ
四三―四五
【さきに】天、一一・二八以下
【己が新婦】寺院。「神の新婦」(天、一〇・一四〇)
四六―四八【西風】即ち春風
【ところ】イスパニア
四九―五一
【浪打際より】グァスコーニア灣(ビスケー灣)より
【時として】夏至の頃。太陽は南に向ふに從つてかの灣に遠ざかるが故にかくいへり、長く[#「長く」に白丸傍点]は日の長きをいふ
【萬人の】南半球には住む人なければ
五二―五四
【カラロガ】カスティールの町(今のカラホルラ)。聖ドミニクス(ドメニコ)の生地なれば幸多きとい
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