よりこれにまさる】一天より、さらに高き一天に導き
四〇―四二
【色によらで】太陽と色の異なるによりてその天の中に明かに見ゆるにあらで、光のこれにまさるによりてしか見ゆるとは
【そのもの】太陽天にてダンテに現はるゝ賢哲の諸靈
四三―四五
【信じ】人たゞかく強き光あることを信じ、いつか天堂にて自らこれを成るを願ふべし
三七行より四五行に亘る三聯ムーア本にては「あゝ己が爲す事の、時を占むるにいたらざるほどいと早く、一の善より、まされる善に移りゆく(愈※[#二の字点、1−2−22]美しくなる)ベアトリーチェはその自ら輝くこといかばかりなりけむ、わが入りし日の中にさへ色によらで光によりて現はるゝ者にありては、たとひわれ、才と技巧と練達を呼び求むとも」云々とあり
四六―四八
人は未だ太陽よりも強き光を見しことなければ、かゝる光を想像し能はざるも宜なり
四九―五一
【尊き父の】神の第四の族、即ち第四天(太陽天)の諸靈
【氣息を嘘く】氣息《いき》は聖靈なり、父と子より出づ(一―三行參照)。神は三一の眞理をかれらに示し給ふ、賢哲といへども地上においてはこの至奧至妙の理を極むるあたはず、今天上にて親しく神の啓示をうけ、これに達するを喜ぶなり
五二――五四
【天使の日】見えざる靈の日即ち神
六一――六三
ベアトリーチェは己が忘られしことを怒らずかへつて滿足の微笑を見せたれば、その目の輝は、專ら神に向ひゐたるダンテの心を呼戻し、彼をしてその身邊の事物を見るにいたらしむ
六四―六六
【勝るゝ】太陽の光よりも
【われらを】ダンテとベアトリーチェとを取卷き、かれらを中心として一圓形を畫けるなり
六七――六九
月のまはりに暈《かさ》の現はるゝさままたかくの如し
【暈り】水蒸氣を多く含み
【暈となるべき糸】暈となるべき光の糸
【ラートナの女】月。ゼウスとラートナの間の女ヂアーナを月と見なせるなり(淨、二〇・一三〇――三二並びに註參照)
七〇―七二
【王土の外に】王土内ならでは知るに由なき。言葉にては傳へ難き
註釋者曰く。繪畫彫刻等極めて貴重なる美術品類の國外輸出を禁ずることあるより、この此喩出づと
七三―七五
【光】諸靈
【かしこに】自ら天堂に到るべき準備をせずして天上の美を知らんとするも何ぞよくその望を達せむ
七六―七八
【日輪】靈
【極に近き星の如く】極に近き星が極を中心とし常に同一の距離を保ちてめぐる如く、諸の靈はベアトリーチェとダンテとを中心としてめぐれり
七九―八一
註釋者曰く。こは譬へを舞の歌(ballata)にとれるなり、號頭《おんどとり》一つ處にとゞまりつゝまづ最初の一節を歌ひその歌終れば圓形を造りて立てる一群の舞姫皆舞ひめぐりつゝこれを繰返し歌終りて止まる、次に號頭なほも一つ處にありて次の一節をうたひその歌終れば全群また新に舞ひめぐり、かくして次第に舞ひ終るにいたる、この舞方ダンテ時代において特にトスカーナに行はると(カーシーニ註參照)
八二―八四
【その一】「燃ゆる日輪」の一
【恩惠の光】神恩の光。眞《まこと》の愛これより出づ
八五―八七
【また昇らざる】一たび天上の幸福を味へる者はたとひ地上に歸るとも僞りの快樂に迷はず道心堅固なるがゆゑに死後必ずまた天に登る(淨、二・九一――三並びに註參照)
【階】天より天と昇る階
八八―九〇
教へをもて汝の求知の念を滿足せしめざる者は、その自然の性を枉ぐる(自由ならざる[#「自由ならざる」に白丸傍点])こと海に注がざる水の如し
水は皆低きにつきて海に流れ入らんとする自然の性を有する如く、我等は皆汝の願ひを滿さんとする性向を有す
九一―九三
【花圈】ベアトリーチェとダンテとをまろく圍める一群の靈。ダンテはこれらの靈の誰なるやを知らんと願へるなり
九四―九六
我は聖ドミニクス派の僧なりき
【迷はずばよく肥ゆ】世の誘惑に從はずは高徳に達す(天、一一・二二以下參照)
九七―九九
【兄弟】宗教上の
【アルベルト】アルベルトゥス・マグヌス。中古最も卓越せる哲學者兼神學者の一、一二〇六年シェヴァーベン(天、三・一一八―二〇註參照)のラウインゲンに生れ、一二八〇年ケルン(レーノ即ちライン河畔の町)に死す、彼がドメニコ派の人となれるは一二二二年の頃にてそれより二十幾年の後ケルンにて教へを授く、著作多し、その學識のいかに博かりしやは百學の師(Doctor universalis)の名あるによりて知りぬべし
【トマス】トマス・アクイナス。アクイーノ(ローマとナポリの中間モンテ・カシノの附近にある町)の伯爵家の出、一二二五年の頃父の領地ロッカセッカに生る、初めナポリの大學に學び、一二四三年ドメニコ派の僧となり、後ケルンに赴きてアルベルトゥスに師事しまた彼と共にパリに到る、一二四八年以降ケルン、パリ、及びナポリの各地にてその業を
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