一〇九―一一一
汝我に欺かると思ふなからんため、わがみづからいふごとく愚なりしや否やを聞くべし、わが齡の坂路《さかみち》はや降《くだり》となれるころ 一一二―一一四
わが邑《まち》の人々その敵とコルレのあたりに戰へり、このときわれ神に祈りてその好みたまへるものを求めき 一一五―一一七
彼等かしこに敗れて幸《さち》なくも逃《に》ぐれば、我はその追はるゝを見、身に例《ためし》なき喜びをおぼえて 一一八―一二〇
あつかましくも顏を上げつゝ神にむかひ、さながら一時《ひととき》の光にあへる黒鳥《メルロ》のごとく、今より後我また汝を恐れずと叫べり 一二一―一二三
我わが生命《いのち》の極《はて》に臨みてはじめて神と和《やはら》がんことを願へり、またもしピエル・ペッティナーイオその慈愛の心よりわがために悲しみその聖なる祈りの中にわが身の上を憶はざりせば、わが負債《おひめ》は今も猶|苦楚《くるしみ》に減《へ》らさるゝことなかりしなるべし 一二四―一二六
されど汝は誰ぞや――汝我等の状態《ありさま》をたづね、氣息《いき》をつきて物いふ、またおもふに目に絆《きづな》なし。 一三〇―一三二
我曰ふ。わが目も
前へ
次へ
全396ページ中79ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
山川 丙三郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング