に於て然るにあらず、また假りに然りと見做すも汝等には善惡を知るの光と 七三―七五
自由の意志と與へらる(この意志もしはじめて天と戰ふ時の疲勞《つかれ》に堪へ後善く養はるれば凡ての物に勝つ) 七六―七八
汝等は天の左右しあたはざる智力を汝等の中に造るもの即ち天より大いなる力、まされる性《さが》の下《もと》に屬して而して自由を失はず 七九―八一
此故に今の世《よ》路を誤らば、その原因《もと》汝等の中にあり、汝等己が中にたづねよ、我またこの事について今明かに汝に告ぐべし 八二―八四
それ純なる幼《をさな》き魂は、たゞ己を樂しますものに好みてむかふ(喜悦《よろこび》の源なる造主《つくりぬし》よりいづるがゆゑに)外《ほか》何事をも知らず 八五―
あたかも泣きつゝ笑ひつゝ遊び戲るゝ女童《めのわらは》のごとくにて、その未だあらざるさきよりこれをめづる者の手を離れ ―九〇
まづ小《さゝ》やかなる幸《さいはひ》を味ひてこれに欺かれ、導者か銜《くつわ》その愛を枉げずば即ち馳せてこれを追ふ 九一―九三
是に於てか律法《おきて》を定めて銜となし、またせめて眞《まこと》の都の塔を見分くる王を立てざるあたはざりき 九四―九六
律法なきに非ず、されど手をこれにつくる者は誰ぞや、一人《ひとり》だになし、これ上《かみ》に立つ牧者|※[#「齒+台」、第4水準2−94−79]《にれが》むことをうれどもその蹄《つめ》分れざればなり 九七―九九
このゆゑに民は彼等の導者が彼等の貪る幸《さいはひ》にのみ心をとむるをみてこれを食《は》み、さらに遠く求むることなし 一〇〇―一〇二
汝今よく知りぬらむ、世の邪《よこしま》になりたる原因《もと》は、汝等の中の腐れし性《さが》にあらずして惡しき導《みちびき》なることを 一〇三―一〇五
善き世を造れるローマには、世と神との二の路をともに照らせし二の日あるを常とせり 一〇六―一〇八
一は他《ほか》の一を消しぬ、劒《つるぎ》は杖と結ばれぬ、かくして二を一にすとも豈|宜《よろ》しきをうべけんや 一〇九―一一一
これ結びては互ひに恐れざればなり、汝もし我を信ぜずば穗を思ひみよ、草はすべて種によりて知らる 一一二―一一四
アディーチェとポーの濕ほす國にては、フェデリーゴがいまだ爭ひを起さざりしころ、常に武あり文ありき 一一五―一一七
今は善き人々と語りまたは彼等に近づくことを恥ぢて避くる者かしこをやすらかに過ぐるをう 一一八―一二〇
されど古をもて今を責め、神の己をまさる生命《いのち》に復《かへ》し給ふを遲しとおもふ三人《みたり》の翁《おきな》なほまことにかしこにあり 一二一―一二三
クルラード・ダ・パラッツオ、善きゲラルド及びフランス人《びと》の習ひに依《よ》りて素樸のロムバルドの名にて知らるゝグイード・ダ・カステル是なり 一二四―一二六
汝今より後いふべし、ローマの寺院は二の主權を己の中に亂せるにより、泥士におちいりて己と荷とを倶に汚《けが》すと。 一二七―一二九
我曰ふ。あゝわがマルコよ、汝の説くところ好《よ》し、我は今レーヴィの子等がかの産業に與かるあたはざりしゆゑをしる 一三〇―一三二
されど汝が、消えにし民の記念《かたみ》に殘りて朽廢《くちすた》れし代《よ》を責むといへるゲラルドとは誰の事ぞや。 一三三―一三五
答へて曰ふ。汝の言《ことば》我を欺くか將《はた》我を試むるか、汝トスカーナの方言《くにことば》にて我と語りて而して少しも善きゲラルドの事をしらざるに似たり 一三六―一三八
我彼に異名《いみやう》あるをしらず――若し我これをその女《むすめ》ガイアより取らずば――願はくは神汝と倶にあれ、我こゝにて汝と別れむ 一三九―一四一
烟をわけてはや白く映《さ》す光を見よ、天使かしこにあり、我はわが彼に見えざるさきに去らざるをえず。 一四二―一四四
斯くいひて身をめぐらし、わがいふところを聞かんともせざりき 一四五―一四七
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   第十七曲

讀者よ、霧|峻嶺《たかね》にて汝を襲ひ、汝物を見るあたかも※[#「鼬」の「由」に代えて「晏」、第3水準1−94−84]鼠《もぐら》が膜を透してみるごとくなりしことあらば、憶《おも》へ 一―三
濕《しめ》りて濃き水氣の薄らぎはじむるころ、日の光微かにその中に入り來るを 四―六
しかせば汝の想像はわが第一に日(このとき沈みかゝりぬ)を再び見しさまを容易《たやす》く見るにいたるべし 七―九
我は斯くわが歩履《あゆみ》をわが師のたのもしきあゆみにあはせてかゝる雲をいで、はや低き水際《みぎは》に死せる光にむかへり 一〇―一二
あゝ千の喇叭《らっぱ》あたりに響くもしらざるまでに人をしば/\外部《そと》より奪ふ想像の力よ 一三―一五
若し官能汝に物を與へずば誰ぞや汝を動かすは、天にて形造《かたちづ
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