竄きらかならず
六一―六三
【終りまで】歌をききつゝ眠りたれば
六四―六九
【目】アルゴスの百眼(淨、二九・九四―六並びに註參照)。アルゴスの守りきびしきを見てゼウス神その戀人イノに近づくあたはざるを怨みヘルメスを遣はしてアルゴスを殺さしむ
【高き價を拂へる】生命を失ふにいたれる
【シリンガ】パン神に慕はれしニムフ、シュリンクス。ヘルメス神この物語(『メタモルフォセス』一・六八九以下)をもてアルゴスを眠らしめその頸を撃ちてこれを殺せり
七〇―七二
【煌】天に登る行列の光
【聲】マテルダの
七三―七五
【林檎】キリスト。雅歌二・三に曰。男子等の中にわが愛する者のあるは林の樹の中に林檎のあるがごとし
【花】變容(マタイ、一七・一―八)によりてあらはれしキリストの榮光
【果】天上に於けるキリストの榮光。花の果に於ける如く、キリストの變容はたゞその榮光の一部の顯現即ち全榮光の一約束に過ぎず
【婚筵】(默示録、一九・七―九)、キリストがその榮光によりてかぎりなく聖徒を福ならしむること
七六―七八
【導かれて】キリストに導かれて高山に登り(マタイ、一七・一)
【氣を失ひ】光と聲とにおどろきて(マタイ、一七・六)
【さらに大いなる睡】死の睡。キリストの言によりて死者の蘇れることあるを指す(ルカ、七・一一以下、ヨハネ、一一・一以下等)
【言葉】起きよ恐るゝ勿れといひたまへるキリストの言葉(マタイ、一七・七)
七九―八一
【變りたる】常の如くになれる
八八―九〇
【組】七淑女。キリスト(グリフォネ)天に昇りて後、神學(ベアトリーチェ)は諸徳(七淑女)にかこまれて寺院(車)を護る
九四―九六
【眞の地】terra vera 眞實にして神に從順なる地の謂か、或ひは曰ふ、席を設けざる裸の地の意と
九七―九九
【光】七の燭臺
一〇〇―一〇二
汝が地上の人としてこの樂園にとゞまるはたゞしばしの間のみ、その時過ぐれば天に登りてかぎりなくかしこに住まむ
【ローマ】天の都。キリストもその民のひとりなり
一〇九―一一一
高き密雲の中より電光の射下する早しといへども。註釋者曰、雨雲高處にあるときは當時の所謂火炎界に近きがゆゑにその影響をうけて電雷常よりも劇しき意と
一一二―一一四
【ジョーヴェの鳥】鷲
鷲はローマ帝國の徽章なれば、鷲が知識の木を荒せるはローマ皇帝等(ネロ、ディオクレティアヌス等)が神の律法をなみせるをいひ、その聖車を打てるは彼等が寺院を迫害せるをいふ
一一八―一二〇
【狐】迫害に次ぎて起れる異端。良き食物は健全なる教義
一二一―一二三
正しき教へ(ベアトリーチェ)に逐はれて異端寺院を去れるなり
一二四―一二六
鷲は皇帝、羽は世の利慾なり。即ち皇帝コンスタンティヌスが法王シルヴェステル一世に領地を供物として捧げしこと(地、一九・一一五―七並びに註參照)
一二七―一二九
【小舟】寺院を指す
一三〇―一三五
龍は即ち宗爭にしてその車底の一部を奪へるは寺院の相分散せる(ギリシア寺院のラテン寺院よりわかれしごとく)をいへるか、ダンテの眞意分明ならず、異説或ひはマホメットとし或ひは魔王とす
一三六―一四一
殘れる物即ち底の一部を失へる車の羽をもておほはれしはその後の皇帝等の供物によりて寺院の所得忽ち膨脹せることを表はす
【おそらくは】彼等或ひは眞に寺院の益をおもひてかく供物を捧げしならむもその結果としてはたゞ寺院の腐敗を招くに過ぎざりしなり
一四二―一四七
寺院富を得ていよ/\利慾に迷ひ腐敗を極むるにいたれるをいふ
註釋者曰。七の頭は七の罪なり、七の罪の中、誇りと嫉みと怒りとは神と人とに對しての罪なればこれに各※[#二の字点、1−2−22]二本の角あり、他の四の罪はたゞ人に對して行はるべき罪なればこれに各※[#二の字点、1−2−22]一本の角あるなりと
この項は地、一九・一〇六以下に見ゆる水上の女と同じく默示録よりいでて意は異なれり、讀者よく思ふべし
一四八―一五〇
【遊女】法王。法王ボニファキウス八世及びクレメンス五世の頃の寺院の腐敗を敍せるなり
一五一―一五三
【巨人】フランス王特にフィリップ四世。遊女と接吻せるはボニファキウスとフィリップと初め相和せるをいふ
一五四―一五六
法王ボニファキウス八世がフランス王家の抑壓を免かれんとして却つてフィリップの虐待を受けしをいふ(淨、二〇・八五―七並びに註參照)
【我に】古註に曰、ダンテはこゝにキリスト教徒を代表し、寺院がキリスト教徒に助けを求めしをあらはせるなりと
一五七―一六〇
クレメンス法王たりし時法王の廳ローマよりフランスのアヴィニオンに移されしをいふ
【盾】林盾の如く目を遮りて
【獸】即ち異形の車


    第三十三曲

ベアトリーチェ、マテルダ、スタティウスとともにダンテかの奇樹のもとを離れ、ゆく/
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