ひ》るの如何によりて汝等の價値《かち》定まるにいたる 六四―六六
理をもて物を究めし人々この本然の自由を認めき、このゆゑに彼等徳義を世界に遣《のこ》せるなり 六七―六九
かかればたとひ汝等の衷《うち》に燃ゆる愛みな必須より起ると見做すも、汝等にはこれを抑《おさ》ふべき力あり 七〇―七二
ベアトリーチェはこの貴き力をよびて自由の意志といふ、汝これを憶ひいでよ、彼若しこの事について汝に語ることあらば。 七三―七五
夜半《よは》近くまでおくれし月は、その形白熱の釣瓶《つるべ》のごとく、星を我等にまれにあらはし 七六―七八
ローマの人がサールディニアとコルシーカの間に沈むを見る頃の日の炎をあぐる道に沿ひ天に逆ひて走れり 七九―八一
マントヴァの邑《まち》よりもピエートラを名高くなせる貴き魂わが負はせし荷をはやときおろし 八二―八四
我わが問ひをもて明《あきら》かにして解《げ》し易き説をはや刈り收めたれば、我は恰も睡氣《ねむけ》づきて思ひ定まらざる人の如く立ちゐたり 八五―八七
されど此時|後方《うしろ》よりはやこなたにめぐり來れる民ありて忽ちわが睡氣《ねむけ》をさませり 八八―九〇
テーベ人《びと》等バッコの助けを求むることあれば、イスメーノとアーソポがそのかみ夜その岸邊《きしべ》に見しごとき狂熱と雜沓とを 九一―九三
我はかの民に見きとおぼえぬ、彼等は善き願ひと正しき愛に御せられつゝかの圓に沿ひてその歩履《あゆみ》を曲ぐ 九四―九六
かの大いなる群《むれ》こと/″\く走り進めるをもて、彼等たゞちに我等の許に來れり、さきの二者《ふたり》泣きつゝ叫びていひけるは。 九七―九九
マリアはいそぎて山にはせゆけり。また。チェーザレはイレルダを服《したが》へんとて、マルシリアを刺しし後イスパニアに走れり。 一〇〇―一〇二
衆つゞいてさけびていふ。とく來れとく、愛の少なきために時を失ふなかれ、善行《よきおこなひ》をつとめて求めて恩惠《めぐみ》を新たならしめよ。 一〇三―一〇五
あゝ善を行ふにあたりて微温《ぬるみ》のためにあらはせし怠惰《おこたり》と等閑《なほざり》を恐らくは今強き熱にて償ふ民よ 一〇六―一〇八
この生くる者(我決して汝等を欺かず)登り行かんとてたゞ日の再び輝くを待つ、されば請ふ徑《こみち》に近きはいづ方なりや我等に告げよ。 一〇九―一一一
是わが導者の詞なりき、かの靈の一曰ふ。我等と同じ方《かた》に來れ、しかせば汝徑を見む 一一二―一一四
進むの願ひいと深くして我等止まることをえず、このゆゑに我等の義務《つとめ》もし無禮《むらい》とみえなば宥《ゆる》せ 一一五―一一七
我は良きバルバロッサが(ミラーノ彼の事を語れば今猶愁ふ)帝國に君たりし頃ヴェロナのサン・ヅェノの院主なりき 一一八―一二〇
既に隻脚《かたあし》を墓に入れしひとりの者程なくかの僧院のために歎き、權をその上に揮《ふる》ひしことを悲しまむ 一二一―一二三
彼はその子の身全からず、心さらにあしく、生《うまれ》正しからざるものをその眞《まこと》の牧者に代らしめたればなり。 一二四―一二六
彼既に我等を超えて遠く走り行きたれば、そのなほ語れるやまたは默《もだ》せるや我知らず、されどかくいへるをきき喜びてこれを心にとめぬ 一二七―一二九
すべて乏しき時のわが扶《たすけ》なりし者いふ。汝こなたにむかひて、かのふたりの者の怠惰《おこたり》を噛みつゝ來るを見よ。 一三〇―一三二
凡ての者の後方《うしろ》にて彼等いふ。ひらかれし海をわたれる民は、ヨルダンがその嗣子《よつぎ》を見ざりしさきに死せり。 一三三―一三五
また。アンキーゼの子とともに終りまで勞苦を忍ばざりし民は、榮《はえ》なき生に身を委ねたり。 一三六―一三八
かくてかの魂等遠く我等を離れて見るをえざるにいたれるとき、新しき想ひわが心に起りて 一三九―一四一
多くの異なる想ひを生めり、我彼より此とさまよひ、迷ひのためにわが目を閉づれば 一四二―一四四
想ひは夢に變りにき 一四五―一四七
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   第十九曲

晝の暑《あつさ》地球のために、またはしば/\土星のために消え、月の寒《さむさ》をはややはらぐるあたはざるとき 一―三
地占者《ゼオマンテイ》等が、夜の明けざるさきに、その大吉と名《な》づくるものの、ほどなく白む道を傳ひて、東に登るを見るころほひ 四―六
ひとりの女夢にわが許に來れり、口|吃《ども》り目|眇《すが》み足|曲《まが》り手|斷《た》たれ色蒼し 七―九
われこれに目をとむれば、夜の凍《こゞ》えしむる身に力をつくる日のごとくわが目その舌をかろくし 一〇―
後また程なくその全身を直くし、そのあをざめし顏を戀の求むるごとく染めたり ―一五
さてかく詞の自由をえしとき、彼歌をうたひいづれば、我わが心をほかに移
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