《よりたの》みてこの新らしき路に就く、願はくは汝我等を導け、そは導く者なくば我等この内に入るをえざればなり ―一八
汝世を暖《あたゝ》め、汝その上に照る、若し故ありて妨げられずば我等は汝の光をもて常に導者となさざるべからず。 一九―二一
心進むによりて時立たず、我等かの處よりゆくこと既にこの世の一|哩《ミーリア》にあたる間におよべり 二二―二四
この時多くの靈の、愛の食卓《つくゑ》に招かんとて懇に物いひつゝこなたに飛來る音きこえぬ、されど目には見えざりき 二五―二七
飛過ぎし第一の聲は、彼等に酒なし[#「彼等に酒なし」に白丸傍点]と高らかにいひ、これをくりかへしつゝ後方《うしろ》に去れり 二八―三〇
この聲未だ遠く離れて全く聞えざるにいたらざるまに、いま一つの聲、我はオレステなりと叫びて過行き、これまた止まらず 三一―三三
我曰ふ。あゝ父よ、こは何の聲なりや。かく問へる時しもあれ、見よ第三の聲、汝等を虐《しひた》げし者を愛せといふ 三四―三六
この時善き師。この圈|嫉妬《ねたみ》の罪をむちうつ、このゆゑに鞭《むち》の紐愛より採《と》らる 三七―三九
銜《くつわ》は必ず響きを異にす、我の量《はか》るところによれば、汝これを赦《ゆるし》の徑《こみち》に着かざるさきに聞くならむ 四〇―四二
されど目を据《す》ゑてよくかなたを望め、我等の前に坐する民あり、各※[#二の字点、1−2−22]岩にもたれて坐せり。 四三―四五
このとき我いよ/\大きく目を開きてわが前方《まへ》を望み、その色石と異なることなき衣《ころも》を着たる魂を見き 四六―四八
我等なほ少しく先に進める時、マリアよ我等の爲に祈り給へと喚《よば》はりまたミケーレ、ピエル及び諸※[#二の字点、1−2−22]の聖徒よと喚ばはる聲を我は聞きたり 四九―五一
思ふに今日地上を歩むいかに頑《かたくな》なる人といふとも、このときわがみしものをみて憐憫《あはれみ》に刺されざることはあらじ 五二―五四
我彼等に近づきてその姿をさだかに見しとき、重き憂ひは涙をわが目よりしぼれり 五五―五七
彼等は粗《あら》き毛織を纏へる如くなりき、互ひに身を肩にて支へ、しかして皆岸にさゝへらる 五八―六〇
生活《なりはひ》の途なき瞽《めしひ》等が赦罪の日物乞はんとてあつまり、彼《かれ》頭を此《これ》に寄せ掛け 六一―六三
詞の節《ふし》によるのみ
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