《お》してかれ斯くいへり 八二―八四
わが飽かざる目は天にのみ、あたかも軸いとちかき輪のごとく星のめぐりのいとおそき處にのみ行けり 八五―八七
わが導者。子よ何をか仰ぎながむるや。我彼に。かの三の燈火《ともしび》なり、南極これが爲にこと/″\く燃ゆ。 八八―九〇
彼我に。今朝《けさ》汝が見たる四のあざやかなる星かなたに沈み、此等は彼等のありし處に上《のぼ》れるなり。 九一―九三
彼語りゐたるとき、ソルデルロ彼をひきよせ、我等の敵を見よといひて指ざしてかなたをみせしむ 九四―九六
かの小さき溪の圍《かこひ》なきところに一の蛇ゐたり、こは昔エーヴァに苦《にが》き食物《くひもの》を與へしものとおそらくは相似たりしなるべし 九七―九九
身を滑《なめらか》ならしむる獸のごとくしば/\頭を背にめぐらして舐《ねぶ》りつゝ草と花とを分けてかの禍ひの紐《ひも》は來《き》ぬ 一〇〇―一〇二
天の鷹の飛立ちしさまは我見ざればいひがたし、されど我は彼も此も倶に飛びゐたるをさだかに見たり 一〇三―
縁の翼|空《そら》を裂く響きをききて蛇逃げさりぬ、また天使等は同じ早さに舞ひ上《のぼ》りつゝその定まれる處に歸れり ―一〇八
國司に呼ばれてその傍にゐたる魂は、この爭ひのありし間、片時《かたとき》も瞳を我より離すことなかりき 一〇九―一一一
さていふ。願はくは汝を高きに導く燈火《ともしび》、汝の自由の意志のうちにて、かの※[#「さんずい+幼」、60−8]藥《えうやく》の巓に到るまで盡きざるばかりの多くの蝋をえんことを 一一二―
汝若しヴァル・ディ・マーグラとそのあたりの地のまことの消息《おとづれ》をしらば請ふ我に告げよ、我は昔かしこにて大いなる者なりき ―一一七
われ名をクルラード・マラスピーナといへり、かの老《らう》にあらずしてその裔《すゑ》なり、己が宗族《うから》にそゝげるわが愛今こゝに淨《きよ》めらる。 一一八―一二〇
我彼に曰ふ。我は未だ汝等の國を過ぎたることなし、されどエウロパ全洲の中苟も人住む處にその聞《きこえ》なきことあらんや 一二一―一二三
汝等の家をたかむる美名《よきな》は、君をあらはし土地をあらはし、かしこにゆけることなきものもまた能くこれを知る 一二四―一二六
我汝に誓ひて曰はむ(願はくはわれ高きに達するをえんことを)、汝等の尊き一族《やから》は財布と劒《つるぎ》における譽《
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