の義)第一の地獄の名
【懸れる】地、二・五二―四註參照
四六―四八
【信仰】キリスト教の信仰、特にキリスト、地獄に下り給へることありとの信仰
五二―五四
【ほどなき】ウェルギリウスの死せる年乃ち紀元前一九年よりキリストの死乃ち紀元三三年までの間
【權能あるもの】キリスト、聖母と同じく地獄内に名を稱へず
五五―六三
【第一の父】アダム
【アベル】アダムの第二子(創世記四・二以下)
【ノエ】ノア、大洪水を免かれしヘブライ人の族長(創世記五・二八以下)
【モイゼ】モーゼ、舊約時代の偉人にしてヘブライ人の律法を定めし者(出エヂプト記二以下)
【神に順へる】民數紀略一二・七に曰く、わが僕モーゼは然らず、彼はわが全家に忠義なる者なり(ヘブル、三・五參照)
或ひは ubidiente を五八行のアブラハムに附し、立法者モーゼ、從順なる族長アブラハムと讀む人あり、これアブラハムがその子イサクを神に捧げんとしたる(創世記第二二章)を特にこゝに指せりとなせしなり
【アブラアム】アブラハム、舊約時代の偉人(創世記一一・二六以下)
【ダヴィーデ】ダヴィデ、イスラエルの王、『詩篇』中の詩人(ルツ、四・二二、其他)
【イスラエル】アブラハムの孫なるヤコブ、天使と相撲ひて後この名を得たり(創世記三二・二八)
【その父】アブラハムの子イサク
【その子等】創世記二九・三一以下參照
【ラケーレ】ラケル、イスラエルの妻
【多くの事】ラケルを妻とせんためその父ラバンの許にとゞまりて十四年間勞役に從へるをいふ(創世記二九・九以下)
六四―六六
【林】古はリムボを大人と小兒との二部に分ちしかどダンテは當時の教に基づきこの區別を廢して之を厚く遇せらるゝ魂と然らざるものとの二にわかてるなり、こゝにいふ林は即ち後者の群なり
六七―六九
【睡り】この曲の始めダンテが頭の中なる熟睡を破られしところ
異本、響き(雷の)または頂
【半球の闇を】偉人等の止まるところより道理の光いでゝリムボの獄の一半を照せるなり
七九―八一
【聲】註釋者多くはこれをホメロスの聲なりといふ
八五―八七
【劒】その詩多く戰ひを敍したればなり
八八―九〇
【オーメロ】ホメロス、ギリシアの詩聖、『イリアス』の作者(前九〇〇年頃)
ダンテは零碎なるラテン語の飜譯によりて僅かにその一部をうかゞひみしに過ぎず、しかれども彼がこの大詩人を尊重する甚だ大なるを見る(淨、二二・一〇一―二參照)
【オラーチオ】ホラティウス、有名なるラテン詩人(前六五―八年)、『サチレス』(諷刺の詩)二卷及び其他の著作あり
されどムーア博士は Satiro は教の詩人(乃ち詩論の著者として)の意にて、諷刺家の意にあらず、ダンテがホラティウスの『サチレス』を知れることはその著作の中にあらはれずといへり、いかゞ
【オヴィディオ】オウィディウス、有名なるラテン詩人(前四三―後一八年)、その著書の中『メタモルフォセス』最もあらはる、ダンテがウェルギリウスに次ぎて最も多く引用せる詩人なり
【ルカーノ】ルカヌス、有名なるラテン詩人(三九―六五年)、カエサルとポムペイウスとの戰ひを敍したる『ファルサリア』の作者なり
九一―九三
【一の聲】或ひはひとりの聲、七九行にいでし聲をいふ
いとたふとき詩人の讚辭は彼等皆我と同じくうくべきものなり、かゝる詩人にしてはじめてよく詩人をしりかく我をうやまふ、また詩聖等相和して他を讚むるに吝ならざるは善し
九四―九六
【鷲の如く天翔る歌聖】ホメロス
一〇三―一〇八
【光】六七―九行
一〇六―一〇八
【城】智徳世にすぐれし知名の士女にしてしかもキリストを信ずるにいたらざりし者のとゞまるところ
【七重の高壘】註釋者曰、七重の高壘は四徳(思慮、公義、剛氣、節制)三知(聰明、知識、智慧)をあらはし一一〇行の七の門は當時ローマの教育科目たりし三文(文法、修辭、論理)四數(音樂、算術、幾何、天文)をあらはせるなりと
ダンテの七數にかゝる寓意ありしや否やもとより明かに知り難し、或ひは單に七數を好み用ゐし一例に過ぎざるか
【流れ】註釋者曰、これ美しき詞の流れなり、これを地上をゆく如く容易に渡りゆきしは筆路の難は詩人の難しとするところにあらざればなりと
一一八―一二〇
【緑の※[#「さんずい+幼」、222−7]藥】緑草の美しきをいへり
一二一―一二三
【エレットラ】エレクトラ、神話、アトラスの女にしてゼウス(ジョーヴェ)神との間にトロイアの建設者なるダルダノスを生めり
【侶】エレクトラの子孫なるトロイア人
【エットル】ヘクトル、トロイア王プリアモスの長子、トロイア戰役の名將
【エーネア】地、一・七三―五註參照
【チェーザレ】ユーリウス・カエサル、最も著名なる古の英傑(前一〇〇―四四年)
アエネアスはイタリア帝業の基をたてしトロイア人なればローマ人はその起源をトロイア人と同じうするのみならず中古の人々カエサルを最初の皇帝と信ぜるが故にダンテ彼をヘクトル、アエネアスと並ばしめしなり
一二四―一二六
【カムミルラ】地、一・一〇六―八註參照
【パンタシレア】アレスの女にしてアマゾン(女軍)の王たり、トロイアの役にギリシア軍と戰ひて死す
【ラティーノ】ラティヌス、ラティウム人の王、アエネアスの外舅
【ラヴィーナ】ラウィニア、ラティヌスの女、アエネアスの妻
一二七―一三二
【ブルート】ルキウス・ユウニウス・ブルートゥス、前六世紀の人、ローマ最後の王タルクィニウス・スペルブスを逐ひローマ共和國を建設す
【ルクレーチア】ルクレティア、ブルートゥスと共にローマ共和國の民政官となれるコルラティヌスの妻なり、タルクィニウスの子セスト(セクストゥス)の辱しむるところとなりて死す
【ユーリア】カエサルの女、ポムペイウスの妻
【マルチア】マルキウス・フィリップスの女にして初めカートン(カトー・ウティケンシス)の妻たりし者
【コルニーリア】スキピオ・アフリカヌスの女、ティベリウス・セムプロニウス・グラックスの妻にてローマ施政の改革に殉ぜる有名なるグラックス兄弟の母なり
【サラディーノ】エヂプト及びシリアのソルダン、寛仁大度の明君として世に知らる(一一三七―一一九三年)
【智者の師】アリストテレス、(アリストーテレ)有名なるギリシアの哲學者、中古の人これを以て哲人中の第一となせり、ダンテはラテン語譯によりてその著書に精通し引用せること甚だ多し(前三八四―三二二年)
一三三―一三五
【ソクラーテ】ソクラテス、有名なるギリシアの哲學者(前四七〇―三九九年)
【プラートネ】プラトン、有名なるギリシアの哲學者(前四二七―三四七年)
一三六―一三八
【デモクリート】デモクリトス、ギリシアの哲學者、その師レウキッボスの説に基づきて原子論を敷衍せり(前三六一年死)
デモクリトスを原子偶然に結合して世界成ると説けりといへるはキケロの著書に據れるなり
【ディオジェネス】ディオゲネス、有名なるキュニコス派の哲學者、小アジアに生れてギリシアに住めり(前三二三年死)
【アナッサーゴラ】アナクサゴラス、ギリシアの哲學者(前四二八年死)
【ターレ】タレス、ギリシア七賢の一、水原説を以て名高し(前六世紀)
【エムペドクレス】シケリアの哲學者(前五世紀)
【エラクリート】ヘラクレイトス、ギリシアの哲學者(前六世紀)
【ツェノネ】ゼノン、ギリシアの哲學者、ストア學派を起せる者(前三〇〇年頃)
一三九―一四四
【ディオスコリーデ】ディオスクリデス、ギリシアの名醫、藥法に關する著者五卷ありてその中に草木の特性を論じたりといふ(一世紀)
【オルフェオ】オルフェウス、ギリシア神話中の詩人樂人
【ツルリオ】マルクス・ツルリウス・キケロ、ローマの哲人能辯家、ダンテ善くその著作に通ぜり(前四三年死)
【リーノ】リノス、ギリシア神話中の詩人伶人
異本、リヴィウス(ローマの史家)
【セネカ】ルキウス・アンナエウス・セネカ、ローマの哲學者、ダンテ善くその著作に通ぜり(六五年死)
【道徳を説ける】文人なりしその父セネカと區別せるなり
【エウクリーデ】エウクレイデス、有名なるアレクサンドレイアの數學者、『幾何原理』十三卷を著はす(前三〇〇年頃)
【トロメオ】クラウディウス・プトレマイオス、有名なるアレクサンドレイアの天文地理學者、ダンテ時代の天文學多く之に據れり(二世紀)
【イポクラーテ】ヒッポクラテス、ギリシアの名醫(前四世紀頃)
【アヴィチェンナ】アラビアの名醫(一〇三七年死)
【ガリエーノ】クラウディウス・ガレヌス、ギリシアの名醫(二〇一年死)
【アヴェルロイス】アラビアの名醫、哲學者、アリストテレスの註疏を大成せるを以て廣く世に知らるゝにいたれり(一一二六―一一九八年)
一四八―一五〇
【二者】ダンテと導者
或ひは、分れて二(乃ち二組)となれりと解する人あり、事同じ
【震ひゆらめく空】第二の獄の
第五曲
やがて第二の地獄にいたればこゝには邪淫の罪を犯せる多くのものゝ狂風に漂はされて暗空の中をめぐるあり、その一なるフランチェスカ・ダ・リミニの魂ダンテに招かれて戀人パオロと共にこれに近づきおのが悲哀なる戀物語をなす
一―三
【少なく】地獄は一大漏斗状をなすが故に下るに從つて地狹し
四―六
【ミノス】地獄の法官
神話に曰、ミノスはゼウスとエウロペの間の子なりクレタ島の君となりて賢明の聞え高し、死後ラダマントス及びアイアコスと共に冥界の法官となると
【入る者あれば】或ひは、入口にて
七―九
【幸なく】マタイ、二六・二四に曰く、その人生れざりしならばかへつて幸なりしならん
一〇―一二
ミノス、刑を宣告するにあたり尾にて身を卷きその卷きたる囘數によりて送るべき獄を示すなり、地、二七・一二
四―六に彼グイードを第八の地獄に送らんため八度尾をもておのが背を卷きしこといづ
一三―一五
【投げらる】地、二一・三四―六には鬼によりて獄に送らるゝ例もあれど多くは罪人のみ各自の刑場におちゆくに似たり
一九―二一
ミノスはダンテと共にあるものの鬼にあらずしてウェルギリウスなるを見、ダンテを威嚇してその導者に對する信念を奪はんとせしなり
【入口ひろき】マタイ、七・一三に曰く、滅亡にいたる路は廣し
三一―三三
心に檢束を加へず情の翼に駕してその行方に任せし生前のさまをあらはすなり
三四―三六
ruina(狂風の吹きまく勢ひ)、異説或ひはこれをキリスト磔殺の當時に起れる岩の崩れ(地、一二・三一以下及び二一・一一二以下)とし或ひはこれを第二の地獄の入口とす
四六―五〇
【暴風】原語、なやむるもの、或ひは爭ひ
五二―五四
【語】語を異にする國民
五五―五七
己が非倫の行爲を蔽はんため不正の結婚を諸氏にゆるせる事
五八―六〇
【セミラミス】アッシリアの女王、前十四世紀頃の者なりといはる
【書】中古廣く行はれし五世紀の史家パウルス・オロシウスの歴史、乃ちダンテの引用書目の主なるものゝ一なり
【ニーノ】ニーヌス。オロシウス曰く、彼ニーノ(ニーヌス)死せる時その妻セミラミス位を繼げり(オロシウス『歴史』第一卷四の四)
【ソルダンの治むる地】エヂプトなるバビロニア(昔のカイロ)
セミラミスはアッシリアの女王なればこゝにソルダンの治むる地云々といへるはエウフラテス河畔のバビロニアとナイル河畔のバビロニアとを混同せるダンテの誤りか、或ひは或る註釋者のいへる如くニーヌスはその存命中にエヂプトの一部を征服してこれをアッシリアの領地に加へしことありとの傳説によれるものか明かならず
六一―六三
【操を破れる者】ディド、アフリカ北海岸なるカルタゴの女王、夫死して後こゝに漂着せるアエネアスを慕ひ、アエネアス、イタリアに向ふに及びて失望のあまり自刃して死す、事『アエネイス』第四卷にくはし
【クレオパトラース】クレオパトラ、有名なるエヂプトの女王、カエサル及びアントニウスを惱まし嬌名甚高し、オクタウィアヌス權を執るに及び恥をローマに晒すをおそれ毒蛇の毒をうけて死す(前六九―三〇年)
六四―六六
【エレーナ】ヘレネ、スパルタ王メネラオスの妻、パリスに誘はれてト
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