一二九
いひ終れる時|黒暗《くらやみ》の廣野《ひろの》はげしくゆらげり、げにそのおそろしさを思ひいづればいまなほわが身汗にひたる 一三〇―一三二
涙の地風をおこし、風は紅《くれなゐ》の光をひらめかしてすべてわが官能をうばひ 一三三―一三五
我は睡りにとらはれし人の如く倒れき 一三六―一三八
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   第四曲

はげしき雷《いかづち》はわが頭《かうべ》のうちなる熟睡《うまい》を破れり、我は力によりておこされし人の如く我にかへり 一―三
たちなほりて休める目を動かし、わが在るところを知らんとて瞳を定めあたりを見れば 四―六
我はげにはてしなき叫喚の雷をあつめてものすごき淵なす溪の縁《へり》にあり 七―九
暗く、深く、霧多く、目をその深處《ふかみ》に注げどもまた何物をもみとむるをえざりき 一〇―一二
詩人あをざめていひけるは、いざ我等この盲《めしひ》の世にくだらむ、我第一に汝第二に 一三―一五
われその色を見、いひけるは、おそるゝごとに我を勵ませし汝若しみづから恐れなば我何ぞ行くをえん 一六―一八
彼我に、この下なる民のわづらひは憐みをもてわが面《おもて》を染めしを、汝みて恐れ
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