時これらの事汝にあきらかなるべし 七六―七八
この時わが目恥を帶びて垂れ、われはわが言《ことば》の彼に累をなすをおそれて、川にいたるまで物言ふことなかりき 七九―八一
こゝに見よひとりの翁《おきな》の年へし髮を戴きて白きを、かれ船にて我等の方に來り、叫びていひけるは、禍ひなるかな汝等惡しき魂よ 八二―八四
天を見るを望むなかれ、我は汝等をかなたの岸、永久《とこしへ》の闇の中熱の中氷の中に連れゆかんとて來れるなり 八五―八七
またそこなる生ける魂よ、これらの死にし者を離れよ、されどわが去らざるをみて 八八―九〇
いふ、汝はほかの路によりほかの港によりて岸につくべし、汝の渡るはこゝにあらず、汝を送るべき船はこれよりなほ輕し 九一―九三
導者彼に、カロンよ、怒る勿れ、思ひ定めたる事を凡て行ふ能力《ちから》あるところにてかく思ひ定められしなり、汝また問ふこと勿れ 九四―九六
この時目のまはりに炎の輪ある淡黒《うすぐろ》き沼なる舟師《かこ》の鬚多き頬はしづまりぬ 九七―九九
されどよわれる裸なる魂等はかの非情の言《ことば》をきゝて、たちまち色をかへ齒をかみあわせ 一〇〇―一〇二
神、親、人および
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