ベリーゴなり、よからぬ園の木の實の事ありてここに無花果に代へ無漏子《むろし》をうく 一一八―一二〇
我彼に曰ふ、さらば汝既に死にたるか、彼我に、我はわが體《からだ》のいかに上の世に日をふるやをしらず 一二一―一二三
このトロメアには一の得ありていまだアトローポスに追はれざるに魂しば/\こゝに落つることあり 一二四―一二六
また汝玻璃にひとしき此涙をいよ/\こゝろよくわが顏より除くをえんため、しるべし、魂わがなせるごとく信に背くことあれば 一二七―
鬼たゞちにその體《からだ》を奪ひ、みづからこれが主となりて時のめぐりをはるを待ち ―一三二
おのれはかゝる水槽《みづぶね》の中におつ、さればわが後方《うしろ》に冬を送る魂もおもふにいまなほその體《からだ》を上の世にあらはすなるべし 一三三―一三五
汝今此處にくだれるならば彼を知らざることあらじ、彼はセル・ブランカ・ドーリアなり、かく閉されてより既に多くの年を經たり 一三六―一三八
我彼に曰ふ、我は汝の欺くをしる、ブランカ・ドーリアは未だ死なず、彼|食《く》ひ飮み寢《い》ねまた衣《ころも》を着るなり 一三九―一四一
彼曰ふ、上なるマーレブランケの濠の中、粘《ねば》き脂《やに》煮ゆるところにミケーレ・ツァンケ未だ着かざるうち 一四二―一四四
この者その體《からだ》に鬼を殘して己にかはらせ、彼と共に逆を行へるその近親のひとりまたしかなせり 一四五―一四七
されどいざ手をこなたに伸べて我目をひらけ、我はひらかざりき、彼にむかひて暴《みだり》なるは是即ち道なりければなり 一四八―一五〇
あゝジエーノヴァ人《びと》よ、一切の美風をはなれ一切の邪惡を滿たす人々よ、汝等の世より散りうせざるは何故ぞ 一五一―一五三
我は極惡《ごくあく》なるローマニアの魂と共に汝等のひとりその行《おこなひ》によりて魂すでにコチートに浸《ひた》り 一五四―
身はなほ生きて地上にあらはるゝ者をみたりき ―一五九
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   第三十四曲

地獄の王の旗あらはる、此故に前方《まへ》を望みて彼を認むるや否やを見よ、わが師かく曰へり 一―三
濃霧起る時、闇わが半球を包む時、風のめぐらす碾粉車《こひきぐるま》の遠くかなたに見ゆることあり 四―六
我もこの時かゝる建物《たてもの》をみしをおぼえぬ、また風をいとへどもほかに避くべき處なければ、われ身を導者の後方《う
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