したがひてしばらく鳴りて後とがれる鋒《さき》をかなたこなたに動かし、氣息《いき》を出していひけるは 五八―六〇
我若しわが答のまた世に歸る人にきかるとおもはゞこの焔はとゞまりてふたゝび搖《ゆら》めくことなからん 六一―六三
されどわがきくところ眞《まこと》ならば、この深處《ふかみ》より生きて還れる者なきがゆゑに、我汝に答ふとも恥をかうむるの恐れなし 六四―六六
我は武器の人なりしがのち帶紐僧《コルヂーリエロ》となれり、こはかく帶して罪を贖はんとおもひたればなり、また我を昔の諸惡にかへらしめし 六七―六九
かの大いなる僧(禍ひ彼にあれ)微《なか》つせばわれこの思ひの成れるを疑はず、されば請ふ事の次第と濫觴《おこり》とをきけ 七〇―七二
我未だ母の與へし骨と肉とをとゝのへる間、わが行《おこなひ》は獅子に似ずして狐に似たりき 七三―七五
我は惡計《たくらみ》と拔道《ぬけみち》をすべてしりつくし、これらの術《わざ》をおこなひてそのきこえ地の極《はて》にまで及べり 七六―七八
わが齡《よはひ》すゝみて人おの/\その帆をおろし綱をまきをさむる時にいたれば 七九―八一
さきにうれしかりしものいまはうるさく、我は悔いまた自白して身を棄てき、かくして救ひの望みはありしをあゝ幸《さち》なし 八二―八四
第二のファリセイびとの王ラテラーノに近く軍《いくさ》を起し、(こはサラチーノ人またはジュデーア人との戰ひにあらず 八五―八七
その敵はいづれも基督教徒《クリスティアーノ》にてしかもその一人《ひとり》だにアークリに勝たんとてゆきまたはソルダーノの地に商人《あきびと》たりしはなし) 八八―九〇
おのが至高の職をも緇衣の分をもおもはず、また帶ぶるものいたく瘠するを常とせし紐《ひも》のわが身にあるをも思はず 九一―九三
あたかもコスタンティーンが癩を癒されんとてシルヴェストロをシラッティに訪へる如く、傲《たかぶり》の熱を癒されんとて 九四―
この者我を醫《くすし》として訪へり、彼我に謀を求め我は默《もだ》せり、その言《ことば》醉へるに似たりければなり ―九九
この時彼我に曰ふ、汝心に懼るゝ勿れ、今よりのち我汝の罪を宥さん、汝はペネストリーノを地に倒さんためわがなすべき事を我に教へよ 一〇〇―一〇二
汝の知る如く我は天を閉ぢまた開くをうるなり、この故に鑰《かぎ》二あり、こは乃ち我よりさきに位にあり
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