にむけしめき 四―六
たとへばシチーリアの牡牛が(こは鑢《やすり》をもて己を造れる者の歎きをその初聲《はつごゑ》となせる牛なり、またかくなせるや好し) 七―九
苦しむ者の聲によりて鳴き、銅《あかがね》の器《うつは》あたかも苦患《なやみ》に貫かるゝかと疑はれし如く 一〇―一二
はじめは火に路も口もなく、憂ひの言《ことば》かはりて火のことばとなれるも 一三―一五
遂に路をえて登り尖《さき》にいたれる時、こゝにその過ぐるにのぞみて舌よりうけし動搖《ゆるぎ》を傳へ 一六―一八
いひけるは、わが呼ぶ者よ、またいまロムバルディアの語にていざゆけ我また汝を責めずといへる者よ 一九―二一
我おくれて來りぬとも請ふ止まりて我とかたるを厭ふなかれ、わが燃ゆれどもなほ之を厭はざるを見よ 二二―二四
汝若しわが持來れるすべての罪を犯せる處、かのうるはしきラチオの國よりいまこの盲《めしひ》の世に落ちたるならば 二五―二七
ローマニヤ人《びと》のなかに和ありや戰ひありや我に告げよ、我はウルビーノとテーヴェレの源なる高嶺《たかね》との間の山々にすめる者なればなり 二八―三〇
我はなほ心を下にとめ身をまげゐたるに、導者わが脇に觸れ、汝語るべしこれラチオの者なりといふ 三一―三三
この時既にわが答成りければ我ためらはずかたりていふ、下にかくるゝたましひよ 三四―三六
汝のローマニヤには今も昔の如く暴君等の心の中に戰ひたえず、たゞわが去るにあたりて顯著《あらは》なるものなかりしのみ 三七―三九
ラヴェンナはいまも過ぬる幾年《いくとせ》とかはらじ、ポレンタの鷲これを温《あたゝ》め、その翼をもてさらにチェルヴィアを覆ふ 四〇―四二
嘗て長き試みに耐へ、フランス人《びと》の血染めの堆《つか》を築ける邑《まち》は今緑の足の下にあり 四三―四五
モンターニアを虐《しひた》げし古き新しきヴェルルッキオの猛犬《あらいぬ》は舊《もと》の處にゐてその齒を錐《きり》とす 四六―四八
夏より冬に味方を變ふる白巣《しろす》の小獅子はラーモネとサンテルノの二の邑《まち》を治む 四九―五一
またサーヴィオに横を洗はるゝものは野と山の間にあると等しく暴虐と自由の國の間に生く 五二―五四
さて我こゝに汝に請ふ、我等に汝の誰なるやを告げよ、人にまさりて頑ななるなかれ、(かくて願はくは汝の名世に秀でんことを) 五五―五七
火はその習ひに
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