らしめんためなり 一五一―一五三
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第二十五曲
かたりをはれる時かの盜人|雙手《もろて》を握りて之を擧げ、叫びて曰ひけるは、受けよ神、我汝にむかひてこれを延ぶ 一―三
此時よりこの方蛇はわが友なりき、一匹《ひとつ》はこの時彼の頸にからめり、そのさまさながら我は汝にまた口をきかしめずといへるに似たりき 四―六
また一匹《ひとつ》はその腕にからみてはじめの如く彼を縛《いまし》め、かつ身をかたくその前に結びて彼にすこしも之を動かすをゆるさゞりき 七―九
あゝピストイアよ、ピストイアよ、汝の惡を行ふこと己《おの》が祖先の上に出づるに、何ぞ意を決して己を灰し、趾《あと》を世に絶つにいたらざる 一〇―一二
我は地獄の中なる諸※[#二の字点、1−2−22]の暗き獄《ひとや》を過ぎ、然も神にむかひてかく不遜なる魂を見ず、テーべの石垣より落ちし者だに之に及ばじ 一三―一五
かれ物言はで逃去りぬ、此時我は怒り滿々《みち/\》し一のチェンタウロ、何處《いづこ》にあるぞ、執拗《かたくな》なる者何處にあるぞとよばはりつゝ來るを見たり 一六―一八
思ふに彼が人の容《かたち》の連《つらな》れるところまでその背に負へるとき多くの蛇はマレムマの中にもあらぬなるべし 一九―二一
肩の上|項《うなじ》の後《うしろ》には一の龍翼をひらきて蟠まり、いであふ者あればみなこれを燒けり 二二―二四
わが師曰ひけるは、こはカーコとてアヴェンティーノ山の巖の下にしばしば血の湖《うみ》を造れるものなり 二五―二七
彼はその兄弟等と一の路を行かず、こは嘗てその近傍《あたり》にとゞまれる大いなる家畜《けもの》の群を謀りて掠めし事あるによりてなり 二八―三〇
またこの事ありしため、その歪《ゆが》める行《おこなひ》はエルクレの棒に罹りて止みたり、恐らくは彼百を受けしなるべし、然もその十をも覺ゆる事なかりき 三一―三三
彼斯く語れる間(彼過ぎゆけり)三《みつ》の魂我等の下に來れるを我も導者もしらざりしに 三四―三六
彼等さけびて汝等は誰ぞといへり、我等すなはち語ることをやめ、今は心を彼等にのみとめぬ 三七―三九
我は彼等を識らざりき、されど世にはかゝること偶然《ふと》ある習ひとて、そのひとり、チヤンファはいづこに止まるならんといひ 四〇―四二
その侶の名を呼ぶにいたれり、この故に我は導者の心をひかんためわ
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