型《かた》をクルーニの僧の用ゐるものにとりたる衣《ころも》を着、目の前まで垂れし帽を被《かぶ》れり 六一―六三
外《そと》は金を施したれば、みる目|眩暈《くるめ》くばかりなれども、内はみな鉛にて、その重きに比ぶればフェデリーゴの着せしは藁なり 六四―六六
あゝ永遠《とこしへ》の疲《つかれ》の衣よ、我等は心を憂き歎きにとめつゝ彼等とともにこたびもまた左にむかへり 六七―六九
されど重量《おもさ》のためこのよわれる民の歩みいとおそければ、我等は腰をうごかすごとに新なる侶をえき 七〇―七二
我乃ちわが導者に、行《おこなひ》または名によりて知らるべき者をたづね、かくゆく間目をあたりにそゝぎたまへ 七三―七五
この時|一者《ひとり》トスカーナの言《ことば》をきゝてうしろよりよばゝりいひけるは、黯《くろず》める空をわけてはせゆく者等よ、足をとゞめよ 七六―七八
おそらくは汝求むるものを我よりうくるをえん、導者乃ちかへりみて曰ふ、待て、待ちてのち彼の歩みにしたがひてすゝめ 七九―八一
我止まりて見しにふたりの者あり、我に追及ばんとてしきりに苛《いら》つ心を顏にあらはせども荷と狹き路のために後《おく》れぬ 八二―八四
さて來りて物をも言はず、目を斜《はす》にしばらく我をうちまもり、のち顏をみあはせていひけるは 八五―八七
この者喉を動かせば生けりとおもはる、また彼等死せる者ならば何の恩惠《めぐみ》により重き衣に蔽はれずして歩むや 八八―九〇
かくてまた我に曰ひけるは、幸なき僞善者の集會《つどひ》に來れるトスカーナ人《びと》よ、願はくは汝の誰なるやを告ぐるを厭ふなかれ 九一―九三
我彼等に、わが生れし處おひたちし處はともに美しきアルノの川邊《かはべ》大いなる邑《まち》なりき、また我はわが離れしことなき肉體と共にあるなり 九四―九六
されど憂ひの滴《したゝり》かく頬をくだる汝等は誰ぞや、汝等の身にかく煌《きら》めくは何の罰ぞや 九七―九九
そのひとり答へて我に曰ひけるは、拑子《かうじ》の衣《ころも》鉛にていと厚く、その重量《おもさ》かく秤《はかり》を軋《きし》ましむ 一〇〇―一〇二
我等は喜樂僧《フラーテ・ゴデンテイ》にてボローニア人なりき、我はカタラーノといひ、これなるはローデリンゴといへり、汝の邑《まち》に平和をたもたんため 一〇三―
常は一人《ひとりのひと》取らるゝ例《ならひ》な
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