るに、我等は二人《ふたり》ながら彼處《かしこ》にとられき、我等のいかなる者なりしやは今もガルディンゴの附近《あたり》を見てしるべし ―一〇八
あゝ僧達よ、汝等の禍ひは……我かくいへるもその先をいはざりき、これ三の杙《くひ》にて地に張られし者ひとりわが目にとまれるによりてなり 一〇九―一一一
彼我を見し時、その難息《ためいき》を髯に吐き入れ、はげしくもがきぬ、僧《フラーテ》カタラーン之を見て 一一二―一一四
我に曰ふ、かしこに刺されて汝の目をひくはこれファリセイ《びと》に勸めて、民の爲にひとりの人を苛責するは善しといへる者なり 一一五―一一七
みらるゝ如く裸にて路を遮り、過ぐる者あればまづその重さを身にうけではかなはじ 一一八―一二〇
その外舅《しうと》およびジユデーア人《びと》の禍ひの種なりしほかの議員等もまた同じさまにてこの濠の中に苛責せらる 一二一―一二三
我はこの時ヴィルジリオがかくあさましく十字にはられ永久《とこしへ》の流刑《るけい》をうくるものあるをあやしめるをみたり 一二四―一二六
彼やがて僧《フラーテ》にむかひていひけるは、汝等|禁《とゞ》むるものなくば、請ふ右に口ありや我等に告げよ 一二七―一二九
我等これによりて共に此處をいで、黒き天使に強ひて來りて、この底より我等を出さしむるなきをえん 一三〇―一三二
この時彼答へて曰ひけるは、いと近き處に岩あり、大いなる圈より出でてすべてのおそろしき大溪《おほたに》の上を過ぐ 一三三―一三五
たゞこの溪の上にのみ碎けてこれを蔽はざるなり、汝等|側《かは》によこたはり底に高まる崩壞《くづれ》を踏みて上りうべし 一三六―一三八
導者しばらく首《かうべ》を垂れて立ち、さていひけるは、かなたに罪人を鐡鉤《かぎ》にかくるもの事をいつはりて我等に教へき 一三九―一四一
僧、我昔ボローニアにて鬼のよからぬことゞも多く聞きたり、彼は僞る者、僞りの父なりときけるもその一なり 一四二―一四四
かくいへる時導者は顏に少しく怒りをうかべ、足をはやめて去り行けり、されば我また重荷を負ふ者等とわかれ 一四五―一四七
ゆかしき蹠《あしうら》の趾を追へりき 一四八―一五〇
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   第二十四曲

一年《ひとゝせ》未だうらわかく、日は寶瓶宮裏に髮をとゝのへ、夜はすでに南にむかひ 一―三
霜は白き姉妹《いも》の姿を地に寫せども、筆の
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