幽霊と推進機
夢野久作
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)推進機《スクリュウ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)荷物|汽船《ボート》が、
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから1字下げ]
−−
[#ここから1字下げ]
元の日活会社長S・M氏といったら、その方面の古い関係者は大抵知っているであろう。娑婆《しゃば》の波風の中でも一番荒い処を渡って来た人で、現在は香港《ホンコン》に居住して日本人の父M翁と呼ばれている。左記は同氏が、筆者に書いてくれないかと云って話した怪談の体験である。かなり古い出来事ではあるが、純然たる実際家肌の同氏が真剣になって話す態度を見ていると事実としか思えない。細かい部分は筆者から質問したものであるが、多少の記憶の誤りがあるかも知れない。謹しんで翁の是正を乞うておく。
[#ここで字下げ終わり]
明治十九年の夏、七月二十五日朝五時半に、ピニエス・ペンドルという南洋通いの荷物汽船《カーゴボート》が、香港《ホンコン》を出て新嘉坡《シンガポール》に向った。噸《トン》数は二千五百。船長
次へ
全28ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
夢野 久作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング