ンチキ》か、懶怠者《ヤクザ》か、喧嘩狂《アマサレ》か、それとも虐殺《ノサレ》覚悟の賭博《カスリ》専門か、海賊間者《クチビ》ぐらいの連中に定《き》まっているのに、この二人に限ってソンナ態度がミジンもない。それこそ見付け物といってもいい位に柔順《すなお》で、無口で、俺(水夫長)の目顔《めづら》ばかり見ながら、スラスラと立ちまわるのだから、薄気味の悪いこと夥しい。ドッチにしてもコンナ荒稼ぎ(密輸入)の船員連中《ボーイズ》と肌が合わないのは、わかり切っているばかりじゃない。給料が又、滅法安かった。どこかの国のスパイじゃないかと思われる位なのを船長は、俺(水夫長)に一言も断らないまま約束《チャーター》してしまったんだから結局、俺の顔を丸潰しにした事になる。
「だから俺は癪《しゃく》に障って癪に障ってたまらなかったんだ。船長の昔なじみ[#「なじみ」に傍点]だか何だか知らねえが、あんな不景気な野郎が、一人半分でもこの船に乗っていると思うと俺あクサクサしちまったもんだ。野郎等二人はドッチミチこの船の貧乏神に違いないんだ。……だから機会《おり》があったら抓《つま》み出してくれようと思っているところへ、ツ
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