すと、それはレミヤ[#「レミヤ」は太字]が日曜|毎《ごと》に参詣していた天主教会の僧正様で、私のために天祐を祈ってくれたアノ老牧師さんではありませんか……。
……ああ……。
……何という、恐ろしい天の配剤で御座いましょう。……何という適切な自然の解決で御座いましょう。……そうして又、何という名裁判で御座いましょう。
……レミヤ[#「レミヤ」は太字]は日曜も休んでいなかったので御座います……。
……私は抱いていた赤ん坊をどこへ取り落したか全く記憶致しません。ただ夢うつつのように法廷をよろめき出て、最前這入って来た通りの道を歩いて、まっ直ぐに先生の処に来たように思うだけで御座います。
(8)[#「(8)」は縦中横]
……イヤもう……こんな恐ろしい、馬鹿馬鹿しい眼に会おうとは、今日が今日まで夢にも想像していませんでした。
……私はもう、失恋していいのか悪いのか、わからなくなってしまいました。……これが失恋というものか、どうなのかすら自分で解からないような、奇妙キテレツな気持ちになってしまいました。……ですからこのような秘密を打ち明けて先生の御判断を仰《あ》おぐの
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