たろう」
「故人夫婦も、それに異存はないだろう」
「いかにもそれがいい……賛成賛成……」
 というので、即座に満場一致の可決という事になりました。
 私達兄弟が予想しておりました危険な運命は、こうして叔父叔母の死によって、思いがけもなく眼の前の事実となって押し寄せて来たのです。「ハルスカイン[#「ハルスカイン」は太字]家の最近い親類」という理由の下に、親類会議の代表者から否応《いやおう》なしに引っぱり出されて、ハルスカイン[#「ハルスカイン」は太字]家の祭壇の前で、無理やりに久し振りの挨拶を交換すべく余儀なくされましたレミヤ[#「レミヤ」は太字]と私達兄弟はタッタ一眼でもう、絶対の運命に運命づけられてしまったのです。お互いに永劫の敵となって一人の女性を争うべくスタート[#「スタート」は太字]を切らせられてしまったのです。そうしてそれからというものは三人が三人とも、ハルスタイン[#「ハルスタイン」は太字]家の別々の室《へや》に住んで、夜は別々に寝て、昼間は一ツ室で睨み合いながら、味も臭いもわからない山海の珍味を、三度三度|嚥《の》み込まなければならなくなったのです。
 その間の恐ろしさと
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