パリ解からなくなります。……のみならずそうした報告を聞けば聞く程、かねてから娘の婿として、空想していた通りの若者に二人が見えて来ますので、老夫婦はもう夜の眼も寝られぬくらい悩まされ初めたものだそうです。……骰子《さい》コロ投げやトラムプ占い式の残酷な方法で二人の中から一人を選み出すような事は、娘が信心する神様の御名にかけて出来ないし、それかといって昔物語にあるように、娘を賭けて競争をさせるような野鄙《やひ》な事もさせられない。……又、よしんば何とかした都合のよい方法で、二人の中の一人を選み出す事が出来たにしても、取り残された一人の慰めようがないので……事によると、これは神様が娘のレミヤ[#「レミヤ」は太字]を生涯独身で暮させようと思《おぼ》し召す体徴《しるし》ではあるまいか……というような取越苦労が、次から次に湧いて来るので、その悩まされようというものは並大抵でなかったそうです。そうして老夫婦はただこの事ばっかり苦にしたために見る見るうちに眼のふちが黒ずんで、隅々の皮がたるんで、衰弱に衰弱を重ねて行ったあげく、一昨年の秋の初め頃、二人とも聊《いささ》かの時候の変化に犯されたが原因で、相
前へ 次へ
全54ページ中25ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
夢野 久作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング