を見ると盲者が云ふ
その顔を見て妻が舌を出す
血圧が
次第々々に高くなつて
頸動脈を截り度くなるも
インチキを承知の上で
賭博打つ国際道徳を
なつかしみ想ふ
二人の恋に
ポツンと打つたピリオツド
ジツト考へて紙を突き破る
日本晴れの日本の町を
支那人が行く
「それがどうした」
「どうもしないさ」
キリストが
或る時コンナ予言をした
俺を抹殺するものがある……と
妻を納めた柩《ひつぎ》の中から
マザ/\と俺の体臭が匂つて来る
深夜……………………
* * *
透明な硝子の探偵が
前に在り うしろにも在り
秋晴れの町
月のよさに吾が恋人を
蹴殺せし愚かものあり
貫一といふ
自分より優れた者が
皆死ねばいゝにと思ひ
鏡を見てゐる
キリストは馬小屋で生れた
お釈迦様はブタゴヤで生まれた
と……子供が笑ふ
十六吋主砲の
真向うの大空が
真赤に/\燃えてしたゝる
キツト死ぬ
医師会長の空椅子に
白い新しいカヴアがかゝつた
羽子板の羽二重の頬
なつかしむ稚《おさ》な心に
針をさしてみる
腸詰に長い髪毛が交つてゐた
ジツト考へて
喰つてしまつた
恐怖
前へ
次へ
全19ページ中11ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
夢野 久作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング