木が、四十五度近く傾いている上に、ピカピカと張り詰められている鋼鉄色の青空を仰いだ。そうして今一度、吾児《わがこ》の血を吸い込んだであろう足の下の、砂利の間の薄暗がりを、一つ一つに覗《のぞ》き込みつつ凝視した。その砂利の間の薄暗がりから、頭だけ出している小さな犬蓼《いぬたで》の、血よりも紅《あか》い茎の折れ曲りを一心に見下していた。
 ……だけども……だけども……。
 という言葉によって行き詰まらせられた脳髄の運転の休止が、又も無限の時空を抱擁《ほうよう》しつつ、彼の頭の上に圧《の》しかかって来るのを、ジリジリと我慢しながら……どこか遠い処で、ケタタマシク吹立《ふきた》てていた非常汽笛が、次第次第に背後に迫って来るのを、夢うつつのように意識しながら……。
 ……だけども……だけども……。
 と考えながら彼は自分の額《ひたい》を、右手でシッカリと押え付けてみた。
 ……だけども……だけども……。
 ……今まで俺が考えて来た事は、みんな夢じゃないか知らん。……キセ子が死んだのも、忰《せがれ》が轢《ひ》き殺されたのも……それからタッタ今まで考え続けて来た色々な事も、みんな頭を悪るくしている俺
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