ちなものだと思いますがね」
「賛成ですね。成る程……」
「ところで、こう申上げては失礼かも知れませんが、あなたの御養父《おとう》様のこの事件に対する判断や、御記憶なぞいうものは、どこまでも人情的……もしくは常識的になっておりますので……あなたも主としてその御養父《おとう》様からお聞きになったお話を骨子として判断をなすった結果、同じ結論に到着されたものと思いますが……」
「その通りです……それで……」
「それでそのお話を、あなたから間接に承わったところによって考えまわしてみますと、この事件の内容はあらかた三ツの出来事に分解する事が出来ると思うのです」
「成る程……そこまでは僕等の考えと一致しているようです」
「……そうですか。それでは説明する迄も無いかも知れませんが、第一は単純な実松源次郎氏の墜死そのものです」
「いかにも……」
「その次は源次郎氏の貯金の紛失事件で、今一つはその甥の行方不明事件と、この三つが固まり合ったのが一ツの事件として判断されているのでしょう」
「敬服です。いよいよ敬服です」
「……ところで、この三ツの事件を組み合わせて、一ツの事件として観察してみますと、かなり恐ろ
前へ
次へ
全53ページ中34ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
夢野 久作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング