のお父様に関する今のお話ですがね……そのお父様が変死された事について、品夫さんは矢張《やは》り御自分一個の観察を下してお在《い》でになるでしょうね」
「……観察というのは……」
「……そのお父さまの変死が、何故に他殺に相違ないか……というような事です」
「それは相当考えているでしょう。探偵小説好きですからね……しかしそんな事を面と向って尋ねた事は一度もありませんよ。もう過ぎ去ってしまった事ですし、そんな事を訊いて又泣き出されでもすると面倒ですから……」
「ハハア。成る程……それじゃ貴方は、貴方御自身だけで別の解釈を下しておられる訳ですナ」
「イヤ。解釈を下すという程でもありませんが、僕だけの常識で説明をつけておるので、手ッ取り早く云うと養父《ちち》と同じ意見なのです。……要するに最小限度のところ、実松源次郎氏の変死を自殺、もしくは過失と認むべき点はどこにも無い……他殺に相違無いという事に就いては、疑う余地が無いと信じているのですが……」
「……では玄洋先生も初めから、実松氏の甥の所業《しわざ》と睨んでおられた訳ですな」
「まあそうなんです。しかし、これは要するに、今お話したような事実を
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