き止め得ないだけで、無意識的には必ずこの男性の鼻の表現の裡面を往来する怪しい気分に感付いているものなのであります。女がゾッコン惚れ込んでいればいるだけ、この方面に対する神経は緊張しているものであります。
偽表現の影響
――悪魔式鼻の表現(九)
旦那様を信用し切っている奥様でもいつの間にか一件を感付いて御座るというのは、こんな消息があるからであります。
男性が念には念を入れてその隠し事の気ぶりを晦《くら》まし、又は知恵の限りを絞ってその秘密の足跡を掻き消していればいるだけ、それだけその努力と苦心の痕は鼻の表現の底に暗い影となって残っているものであります。極めてヒステリックな婦人又は極めて順良な女性には又特にこのような点に敏感なのが多いようであります。
このような女性は動《やや》もすると理屈なしの不意打ちに男性の言葉を「ウソ」だと否定し、男性が隠し切っている心理状態を思いも寄らぬ方面から抉《えぐ》り出して痛烈な攻撃を加えることがあります。又は眼の前ではさり気なく男の言葉にうなずいていても、いつかどこかで人知れず袖《そで》を噛みしめていることなぞがあります。
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