恐るべき影響を自分以外の者に及ぼし、その影響が如何に自分に反射して来るものであるか、十目の見るところ十指の指すところ、如何に隠しても隠し切れぬものであるか、神様は見通しという因果関係が如何にして出来て来るものであるかという研究は、さらに鼻の表現に新生面を与えるものでなければなりませぬ。
 ここに男性というものがあると仮定します。
 その男性なるものは極度に婦人を侮辱し蹂躙する事を得意とする性格を持っていると仮定します。その鼻の表現が如何に記憶に支配されて相手の婦人に影響して行くか……。
 昨日は女優、今日はウエイトレス、明日《あす》は女学生、明後日《あさって》は交換嬢と、到る処に手を握り締め涙を流して、
「あなたは僕の未来の妻です」
 と身をふるわせ得る鳥打帽……。
「きっと身受けして本妻に」
 と行く先々で嬉しがらせる金鎖……。
 或いは又、吾が家の前で今一度口を拭って、
「ああくたびれた。どうも用事が長引いてね……」
 と鞄一パイのお土産を荷《かつ》ぎ込む中折れ……。こんな方々が如何に色男で才子で信用があっても、変態心理の所有者でない限りその心に残っている記憶の影を踏み消す訳に参り
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