した社会の気前を代表しているのだそうであります。
 これを人類学的に分類致しますと、「アイヌ型」「コーカサス型」「モンゴリア型」「天孫型」「アレイ型」なぞの数種になる。いずれも本来はその文化程度を標示している筈のものだと申します。
 一方舶来では各人種それぞれに共通の標準型があって、各その国民性もしくは民族性を代表しているそうであります。先ず上品な「希臘《ギリシャ》型」、勇敢な「羅馬《ローマ》型」、悪ごすそうな「猶太《ユダヤ》型」、高慢チキな「アングロサクソン型」、意地の強い「ゲルマン型」、単純な「スラブ型」、そのほかいろいろ。下って「ニグロ型」「食人種型」「擬人猿類型」、就中《なかんずく》「狒狒《ひひ》型」「猩猩《しょうじょう》型」なぞいうものがありますが、もうこの辺になると、呑《のん》だくれの異名か好色漢の綽名《あだな》か、又は進化論者が人類侮辱の刷毛序《はけついで》につけた醜名《しこな》か、その辺のところがはっきりしません。先ず「赤っ鼻」や「潰れ鼻」又は「ポカン鼻」なぞいう病的表現と一所にここでは唯敬意だけ払っておく事に致します。
 初対面の場合なぞは、この鼻の恰好から来る感じを
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