とが如何に入れ交《まじ》り飛び違って日常の交際に活躍していることでしょうか。舌筆に尽されぬ位複雑多角形な人類生活の各種の場面に出合った人々の、形容も出来ぬ位込み入った各種の表現が、如何に巧みに、或いは如何にゴチャゴチャと刹那的に行われつつある事でしょうか。そうして如何なる反応と共鳴とを交換しつつある事でしょうか。
「こんな高価《たか》い帯地が買えるものかね」
と番頭さんには云いながら、「欲しいわねえ」という鼻の表現を御主人に振り向けられます。御主人はさり気なく葉巻の煙をさり気なく吹き上げながら、
「そうだなあ」
と鼻だけニッタリとさせて、「ネーアナタ」を期待しておられます。序《ついで》に「些し困るけどお前のためなら」という恩着せがましい表情を鼻の御隅《おんすみ》に添え付けておられる……といったような場面はちょいちょい拝見するようであります。この表現を見分けるか見分けぬかが又番頭さんの腕前の分かれるところで、この潮合に乗りかけて、
「その代り柄や色合はしっかり致しておりますから却《かえ》って御徳用でゲス。第一|見栄《みばえ》が他のものとは全く御覧の通り違いますから……近頃ではどなた様
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