ゃらっぽこ》を云って他人を瞞着しようとする時又は気がさしたり図星を刺されたり素《す》ッ破《ぱ》抜かれたりした場合なぞに、手が思わず鼻の処に行ったり又は何となくエヘンが出たりするのは、鼻の頭の表現が無意識に気にかかるからで、何とかして誤魔化さねばその事実を鼻に裏書きされるか又は反証を挙げられそうな気もちから起った反射運動に他ならないのであります。
表現の受け渡し
――鼻の動的表現(十)
▼鼻の表現は眼にも止まらず心にも残らぬ。
▼しかも不断にその人の真実の奥底まで表現してソックリそのまま相手に感銘させている。
▼そして鼻自身は知らん顔をしている。
▼その相手の感銘にこっちの鼻以外の表現で瞞《だま》したり乱したりする事が出来る。
▼しかし鼻の表現だけは偽る事も誤魔化す事も出来ない。
この事実の如何に一般に認められていないかという事は驚くべきものがあります。それは恰《あたか》も一般人士が常に自分の鼻に導かれて歩行しながら、些しも鼻の御厄介になった覚えはないと考えておられるのと同比例しはしまいかと考えられる位であります。
同時にこの偽り得る表現と偽り得ない表現
前へ
次へ
全153ページ中66ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
夢野 久作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング