リと一雫《ひとしずく》しないまでも、ここを見損ねた親たちや仲人は、あったら娘を一生不幸の淵に沈淪《ちんりん》させる事になるのであります。
「オッと来《きた》り承知の助。さあさあ何でも持って来い。すっかり俺《わし》が片付けてやる」
 といった程度の安請合いに対する誠意の有る無しは、その眼よりも口よりも真中でニヤニヤ笑っているところに最もよく現われていなければなりませぬ。
「何様《どなた》も御馳走様になりまして。お珍らしいものばかり。イヤ頂戴致します」
 と云いながらちっとも頂戴する気にならない気もちは、細く波打つ眼とおちょぼ口との間にありありと見えすいているものであります。
 男と死ぬ約束をして奉公先からそれとなく暇乞《いとまご》いに来た娘が帰るさに、
「身体《からだ》を大切にしておくれ」
 と云われて、
「アイヨ」
 と笑った眼つき口もと。その間に云い知れぬ悲しい決意を示す鼻の表現……それがそれとなく気にかかって、
「ああ。無分別な事でも仕出かしてくれなければよいが」
 という物思い……。
 その他「重々恐れ入りました」という奴の鼻が「今に見ろ」という気ぶりを見せ、「貴方はおえらいです
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