ている。
「人間到る所青山ありさ」
 なぞ達観したような事を云いながら、鼻だけはゲッソリして白茶気ている。甚だしいのになると、何だか水洟《みずっぱな》でもシタタリ落ちそうで、今些しで泣き笑いにでもなろうかという、極度に悲観した心理状態を見せているものさえあります。
 かようにして眼や口なぞが如何に努力をしても、その人間の本心から湧き出して来る感情が鼻の上に現われるのばかりは瞞着する事が出来ないように出来ているのであります。
 同様に鼻はその本人の真底の意志を少しも偽らずに表明しているものであります。
 意志がグラグラしている以上、鼻は如何なる場合でも決意の閃《ひらめ》きを見せませぬ。如何に威勢よく飛び出しても、心から行こうという気がなければ鼻は必ず進まぬ色をしているのであります。
 惚れたお方を婿殿にと図星をさされた娘がテレ隠しに、
「妾《わたし》あんな人はいや」
 と口では云いながら飛び立つ思いを見せた鼻の表現がある――一方に嫌な男の処へ行けという親の前に両手を突いて温柔《おとな》しく、
「私はどうでも」
 という進まぬ鼻の表情……仮令《たとえ》それが悲し気に痛々しくなってやがてホロ
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