を見るたんびに親を怨んでいるので御座いますよ」
と如何にも口惜《くや》しそうに云っていても、鼻ばかりは正直に、
「そう云っとかないと悪いからね」
という気持ちをうごめかしているのであります。
世間への義理や家内への示しのため、親類会議の真中へ一人息子を呼び出して、
「久離《きゅうり》切っての勘当」
を云い渡す親達の怒った眼と正反対に涙ぐましい鼻の表現――そこにすっかり現われている千万無量の胸のうちは、その座にいる人々をして道理至極とうなずかせずには措《お》きません。
「あの後家さんはいつも呑気そうに気さくな事ばかり云っては人を笑わしているけれど、流石《さすが》にどことなく淋しそうな顔をしているわね」
と界隈の噂に上るのは、その後家さんの鼻の表現が他人にうつるからであります。心の貞節や人知れぬ涙を決して人に見せまいとする悩みから湧くこの世の淋しさが、まざまざと鼻に現われて来るからであります。
情ない時、しくじった時、困った時、又はギャフンと参った時なぞは、その気持が特に著しく鼻にあらわれるものであります。
「ナアニ。何でもないよ。アハハハ」
と笑いながら、鼻はすっかりしょげ
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