この態度を見た満廷の諸神は、皆驚きの評を発しました。今まで死後の裁判に引き出されて、怖れ戦《おのの》きつつ自分の善行を陳《の》べ立てぬものは只の一人も無かったのであります。既に木乃伊《ミイラ》にされたダメス王自身でさえも、一平民と同様に法廷の甃《いしだたみ》にひれ伏した位でありました。然るにその鼻ばかりが王の生前の威儀を保ち、神々を恐れる気ぶりも見せぬという事は、実に前代未聞の事であったからであります。
 顔を見合わせた判官たちは、次々に立ってダメス王の鼻の訊問を初めました。
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問…被告ダメス王の鼻よ、汝は汝自身に静的と動的の両表現界のいずれに属するものと信ずるや。
答…予は両表現界の代表者なり。
問…王の眼、口、眉等は王の生前、各独立してその固有の動的表現をなし得たり。汝は独立して何等かの表現をなし得たる記憶ありや。
答…無し。
問…被告ダメス王の鼻よ。汝は汝自身に非ざればなし得ざる表現として他に認められたるものありや。
答…無限にあり。
問…そは他の顔面表現係の補助を受けてなし得たるものに非ざるなきか。
答…記憶せず。
問…この事に就いて考
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