晶の玉座の上に朝の雲、夕の雲、五色七彩の袖《そで》眼も眩《まばゆ》く、虹霓《こうげい》の後光鮮かにホリシス神が出現しまして、赫燿たる顔色に遍《あまね》く法廷を白昼の如く照し出します。同時に正面中央の二名の判官が立ち上って、「鼻の裁判開廷の理由書」を同音に読み上げます。
「被告ダメス王の鼻は、王の顔面の静的動的両表現界の中央に位し、王の存命中傲然として何等の動的表現をなさむ。王の眼、眉、口等が無量の動的表現を以て王の知徳を国民に知らしむべく努力したるにも拘らず、国民の尊信は悉く王の鼻にのみ集中せり。その状|恰《あたか》も王のすべての表現の功を奪えるに似たり。凡《およ》そ無為徒食して他の功労を奪う者は重罪者たるべき事、神則人法共に知るところなり。依ってこの裁判を開き、ダメス王の鼻の罪の有無を諸神の批判に措《お》き、ホリシス神の御名に依って処断せむと欲するものなり」
読み終った判官の一人は厳然としてダメス王の鼻に問いました。
「被告ダメス王の鼻よ、汝に於て弁疏《べんそ》せむと欲するところあれば速《すみやか》に述べよ」
ダメス王の鼻は面倒臭そうに唯一言、
「弁疏無し」
と答えました。
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