した。これはこの時に死亡しました埃及王ダメス二世の鼻の裁判が開かれるためでありました。
 埃及国の慣わしと致しまして、人間は死にますとすぐに神の法廷に召されて審判を受けます。即ちその心臓を秤《はかり》にかけられて罪の軽重を秤《はか》られ、罪無き者は神と合《がっ》し、罪の軽いものは禽獣草木に生れ換り、悪業の深い者は魔神のために喰ってしまわれる事になっておりました。
 ダメス王はその統治する埃及国に於きまして、世界最初の文化の真盛りの時代を作った名王でありました。従ってその鼻の高さは世界最初のレコードを見せておりましたために、特別に天地の諸神の注意を惹《ひ》きまして、扨《さて》こそかような御念入り裁判が開かれたものと察せられました。
 その時の裁判の情景は、その法廷の記録係タータというものに依って詳細に記録されて今日に伝えられております。これに依って見ますと、鼻の表現的使命は、既に紀元前一千二百余年前に於て明確に決定されているのであります。
 タータの記録した象形文字は、次のごとく訳されております。
 ……………………………………………………
 正面中央の高座、白雲黒雲の帳《とばり》の中に
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