面の装飾のため。それから今一つは、その文化向上のプライドを何等《なんら》かの方法に依って標示したいという内的の刺激からこんな風に発達して来たものである。その証拠には下等動物程鼻が低くて、上等動物ほど鼻が高い。要するに鼻は、ピラミッドの芸術的価値と自由女神像の宗教的価値とを一つにした意味をもっているものである。鼻というものは只それだけのものである」
ところがもっと神経の鋭い人は、こうした断定があるにしてもまだまだ不満足が感ぜられるに違いありません。依然としてこの鼻に対して懐疑の念を持ち続けられるに違いありませぬ。
「たしかに何等かの使命を持っているものに違いない。もっともっと高潮した意義を含む存在の理由……人間の内的生活に対して何等かの深い関係を持っているもののように思われてならぬ……そうして又見れば見る程不思議な恰好……恐ろしく神秘的なもののような……同時に又恐ろしく無意義なるもののような……」
こうしてとうとう要領を得ずじまいに終られる方が多いであろうと考えられます。
しかしこの疑問に対してもっと突込んで研究して行こうというのは、いずれにしても余程の閑人か又はかなりの生まれ損な
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