呪われた鼻
――運命と鼻の表現(六)
獣《けもの》からやっとこさと人間へ進化して来た鼻は、初めて地面から手を離して四方をキョロキョロ見廻しました。ここまではスフィンクスの暗示に依って進化して来たのでありますが、これから先どこに向って進化向上していいか見当がつかなかったからであります。
意地の悪いスフィンクスは折角《せっかく》ここまで連れて来ながら、その鼻の表現を隠して人間を五里霧中に突放《つきはな》しました。
突放された人間がヒョットコでありました。
ヒョットコは見る物毎に驚きました、呆れました。人間の五官の世界が果しもなく広く美しく眩しく荘厳に不可思議なのに肝を潰してしまいました。えらい処へ来たと思いました。大変なものばかりであると思いました。そのために鼻の穴がスッカリ開け放しになってしまいました。
オッカナビックリ歩きまわって見ました。しかしいくら歩きまわっても、只驚くべき怪しむべき事ばかりで、行っても行っても同じ風が吹いているという事だけがわかりました。どこへどう落ち着いて、どんなに日を送っていいか、まるっきり見当がつかなくなりました。
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