キリ此奴《こやつ》と名判官が睨むのは、その無私公明、青空止水の如き心鏡に、被告人の鼻の表現がありありと映ったものに違いありませぬ。
 かようにして鼻の表現は、人間に記憶力なるものが存在する限り法律上の罪悪をも映し出すので、こうなると現代の証拠裁判なぞいうものは甚だ不確《ふたしか》なものとなります。指紋などの研究よりも何よりも、先ず鼻の表現の研究の方が刻下の急務ではあるまいかと考えられる位であります。
 かようにして法律上の罪悪、又は道徳上の汚行は、その犯行者本人の鼻の表現に依って呪われて行くのであります。この境界を超脱した純正純美なる鼻の表現の持ち主こそ真の紳士、真の淑女と呼ばるべき人々で、人類文化生活の共同的向上は、このような人々に依ってこそ達成せらるべきであります。学識財産、身分の高下、服装の如何等に依ってこの尊号を奉る事が人類堕落の原因である事は説明する迄もないのであります。

     輪廻転生
       ――運命と鼻の表現(一)

 その人の個性及び、その個性がその人の修養と経験とで研《みが》き上げられた人格とが、鼻の表現の変化の根柢を作っている事は、今まで研究して参りま
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